日立メディコ事件(最高裁S61.12.4)
労働契約法第17条(有期労働契約)についての参考判例

■日立メディコ事件(概要)
 Xは、昭和45年12月1日から同月20日までの臨時員として雇用され、同月21日以降、期間2ヶ月の労働契約が5回更新されてきたが、会社は不況に伴う業務上の都合を理由に、昭和46年10月21日以降の契約の更新を拒絶した。


★ポイント
1.会社の臨時員制度は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、臨時員の採用に当たっては学科試験や技能試験等は行わず簡易な方法で採用を決定していた。

2・臨時員に対し、一般的には前作業的要素の作業、単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に従事させる方針をとっており、Xも比較的簡易な作業に従事していた。

3.臨時員の契約更新に当たっては、更新期間の約1週間前に本人の意思を確認し、当初作成の労働契約書の「4雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し、臨時員の印を押捺せしめていたものであり、Xとの間の5回にわたる労働契約の更新は、いずれも期間満了の都度新たな契約を更新する旨を合意することによってされてきた。

4.会社は雇止めをXら臨時員等に告知した際、柏工場の業績悪化等を説明した上で、希望者には就職先の斡旋をすることを告げたが、Xはそれを希望しなかった。

☆判決
「5回にわたる契約の更新によって、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいは期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない。」

「臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、Xとの間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反または不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。」

「しかし、臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。」 

「工場を一つの事業部門として独立採算制をとっていたことが認められるから、同工場を経営上の単位として人員削減の要否を判断することが不合理とはいえず、本件雇止めが行われた昭和46年10月の時点において、工場における臨時員の雇止めを事業上やむを得ないとした判断に合理性に欠ける点は見当たらず、本件雇止めについては、当時のXに対する対応等を考慮に入れても、これを権利の濫用、信義則違反と断ずることができないし、また、当時の工場の状況は同工場の臨時員就業規則74条2項にいう「業務上の都合がある場合」に該当する。」

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