和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

阪急トラベルサポート事件(第1回目)(東京地裁 H22.5.11判決)
阪急トラベルサポート事件(第2回目)(東京地裁 H22.7.2判決)
阪急トラベルサポート事件(第3回目)(東京地裁 H22.9.29判決)
(第1回目、第2回目 労働経済判例速報 通算2080号/第3回目 通算2089号)

前回、前々回に事業場外みなし労働時間制の解説をしましたが、おわかりいただけたでしょうか。

今回から3回シリーズで、阪急トラベルサポート事件を取り上げ、もう少し詳しく見てきたいと思います。

この事件は、社員が旅行添乗業務は事業場外みなし労働時間制が適用されないとして、未払いの時間外手当を請求したものです\(*`∧´)/

これに対し会社は、事業場外みなし労働時間制が適用されるし、もし適用されないとしても、11時間の労働時間で日当(給料)いくらと決めているので、3時間分の時間外手当は日当に含めて支払っているとしています(-""-;)

3件別々に提訴されていますが、内容としてはほぼ同じです。
しかし、判決は分かれました。

第1回目の裁判では、事業場外みなし労働時間制は適用されないとしました(-_-メ
理由は、旅行行程表や社員の報告から労働時間を算定できるからということです。

ところが、第2回目、第3回目の裁判では、事業場外みなし労働時間制が適用されるとしました(^_^)v
理由は、実際には旅行行程表通りとはならないし、社員の報告もおおまかで、これにより労働時間を算定することは困難だからということです。

旅行行程表はありますが、実際にはその通りの時間で動くことはまずありません。
ツアーが始まれば、あとは社員の裁量に任されます。

労働時間と労働時間以外を正確に把握するのは困難で、実際のところ本人にしかわかりません。
そういう意味では、第2回目、第3回目の事業場外みなし労働時間制が適用されるとの判断が妥当だとは思います( ̄_ ̄ i)

しかし、第1回目の判決のように、「やろうと思えば労働時間の算定はできるだろう」とつっこみが入ることもあります。
事業場外みなし労働時間制を採用する場合は、労働時間の算定が困難かどうかの検討をよくよくする必要があります。

ちなみに、労働基準監督署は適用されないとして、是正勧告を出しましたが、会社は適用されるとしてこれを拒否しましたヽ( )`ε´( )ノ
2回目、3回目の裁判官は適用されるとしているように、労働基準監督署が必ずしも正しいとは限りません。
明らかな法律違反でなければ、是正勧告を拒否することもありです。

(次回につづく)