和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


未払い残業問題では、次のようなことがよく争点になります。
①管理監督者に該当するか
・・・・管理職だから時間外労働や休日労働は発生しない
②業務命令はあったか
・・・・社員が勝手に時間外労働や休日労働をした
③みなし残業手当になるか
・・・・役職手当等に割増手当分が含まれている
④割増単価は正しいか
・・・・家族手当や住宅手当は割増の基礎に含まれない
⑤みなし労働は適用になるか
・・・・営業は事業場外みなし労働が適用され時間外労働は発生しない

この事件は、①~④が争点になりましたが、ことごとく否定されてしまいました!

オーマイゴット\(゜□゜)/

①~③はよくあることなので仕方ないとしても、④についてはずさんなやり方が被害を拡大したといえます。
詳しくは後述しますが、オーナー企業にありがちな失敗なので、ポイントをよく押さえてください。

では、順番に解説していきますね。

①管理監督者に該当するか
  →該当しない


管理監督者に該当するかどうかのポイントは次のとおり。
○会社全体に占める管理職の割合は
○社員採用の権限があるか
○部下の人事考課をしているか
○出退勤の管理をされているか
○時間外手当を付けなくても相応の給料になっているか

会社は社員7名にもかかわらず5つの部署があり、ほとんどの部署に1名しかいない状態でした。
当然、管理職割合は高いです。
原告はそのうちの一つ、不動産事業部の責任者だったわけですが、このような状況で管理職といえるはずもなく、実際、採用の権限もなく人事考課もしていませんでした。

しかも、タイムカードで労働時間の管理をされており、直行直帰も申請書が必要。
給料は一番多かったのですが、それは管理職だからではなく業務の対価によるものでした。

結局、何ひとつ管理監督者としての要件を満たしておらず、全否定されてしまいましたヽ((◎д◎ ))ゝ

そもそもこの会社、管理職以外の社員にも割増手当を支払っておらず、全社員について割増手当を支払うつもりはなかったようです。

これが付加金命令の根拠のひとつにもされましたが、よほど社員との関係をよくしていないと、他の社員からも訴えられかねないですね。
今回前例をつくってしまいましたし・・・。

(次回につづく)