和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


今までこの事件について解説していましたが、まとめると次のようになります。

【判決】
①未払い残業代として約386万円の支払い
②付加金として約267万円の支払い
③年14.6%の遅延利息の支払い(約100万円)

【争点】
①管理監督者に該当するか
→該当しない
②業務命令はあったか
→黙示の業務命令に基づき行われていた
③みなし残業手当になるか
→役職手当などを時間外・休日手当の代わりとする証拠はない
④割増単価は正しいか
→住宅手当も家族手当も割増単価の基礎から除外することはできない


争点はことごとく否定されました。
①の未払い残業代請求額は484万円だったので、それよりは少なくなっていますが、ほぼ全面敗訴といっていいでしょう(((゜д゜;)))
社員7名の会社には厳しすぎる結果だと思います。

オーマイゴット\(゜□゜)/

今回からは、これを反面教師として、どのようにすればよかったのかを考えてみます。

まずは①管理監督者に該当するか。
管理監督者であれば、②~④は検討するまでもなく割増手当の必要はありません。
管理監督者と認められるかどうかは極めて重要です。
ただ、管理監督者にはどれだけ働かせても割増手当は必要ないということから、認められるためには、いくつかの高いハードルを超えなければなりません(-_-メ

まずは、実際に管理監督をしていたかどうかです。
この会社は社員7名であるにもかかわらず、部署が5つもあります。
詳細は不明ですが、おそらく5部署それぞれに1名ずつ管理職がいたものと思われます。
当然、部下がいない人もいたわけで、これで管理監督者といえるはずがありません(-""-;)
この状況で管理監督者とするためには、この中から1名、多くても2名だけを管理職として扱うべきです。
そして、部下の人事考課をさせ、新たに社員を採用する場合は一緒に立ち会わせるなどのことも必要でしょう。
管理監督者というからには、管理監督をしていなければならないのです(^-^)

また、そもそも管理監督者に割増手当が必要ないという理由は、管理監督者については労働時間の管理をしないからです。
つまり、労働時間という概念がないので、当然時間外・休日労働という概念もありません。
したがって、割増手当はありえないということになります。

そうすると、タイムカードなどで勤務時間を管理しているとなると管理監督者とはいえなくなります。
ただ、タイムカードを打刻させること自体はかまいません。
管理監督者といえでも社員なので、健康管理の面から働き過ぎなどのないようチェックする必要があるからです。

ここでいう勤務時間の管理とは、出退勤を管理することのことです。
遅刻・早退・欠勤について減額していたりすると、まず間違いなく認められません。
今回のケースでは、直行直帰について申請書を提出させていてことも、勤務時間の管理をしているとされました(→o←)ゞ

それから、給与はそれ相応の金額を支払う必要があります。
特に、割増手当が付く部下よりも給与総額が少ないようでは、まず認められません。
昇格したのに収入が減るのでは理屈に合いませんからね(`×´)
(現実にはこういうことも多いようですが)

管理職には役職手当のようなものが付くと思いますが、この手当の額が問題です。
少なくとも、割増手当よりは多くないといけません。
そうでないと収入が減ってしまいますからね。
ひとつの目安としてはこんな感じでしょうか。
主任1万円→係長2万円→課長5万円→部長8万円
ちなみに、少なくとも課長以上でないと管理監督者とは認められないと思ってください。

最後に、できれば経営会議のようなものに参加させられるとベストでしょう。
社員ではありますが、経営者側の人間といった扱いがあるとグンと認められやすくなります(^_^)v

(次回につづく)