和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

未払い残業代の請求をされる原因は2つあります。
①残業や休日出勤をさせたにもかかわらず手当を支払っていないこと
②労使関係がうまくいっていないこと


①は当然ですが、それがあったからといって訴えられるかというとそうとは限りません。
実際、法律どおりに残業代を支払っている会社はほとんどないといっていいくらいですが、でも訴えられる会社はごく一部です。
それはなぜかというと、②がうまくいっているからです(-""-;)

前回お話ししたように、円満退社であればまず訴えることはありません。
サービス残業という事実だけではトラブルにはならないのです。

今までは・・・

実は、これがそうでもなくなってきています(><;)

詳しくは次回からシリーズでご紹介しますが、デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)というものがあります。
これは、未払い残業代請求事件の様々な要素を凝縮したような事件で、しかも今後の未払い残業代請求のリスクを暗示しています。

事実関係からすると、この会社は訴えられても仕方ないのですが、少しかわいそうなところもあります。
それは、訴えを起こした社員は会社に対し背任行為をしており、会社に対して謝罪すべき立場で実際謝罪もしています。

にもかかわらず、たまたま紹介された弁護士から未払い残業代請求のアドバイスを受け、もらえるものはもらおうということで裁判を起こしたのです!

オーマイゴット\(゜□゜)/

今までの未払い残業代請求というのは、会社に対する「報復措置」という意味合いが強かったのですが、今後はそれだけでなく「損得勘定」で訴えるケースが増えてくると思います。

在職中は残業代の未払いなんて気にもしていなかったのに、退職した後に訴えれば何約百万円ももらえるかもしれないと知ったら、そりゃあ恩義なんか忘れて訴える人も出てきますよね(-_-メ

消費者金融の過払い問題だってそうじゃないですか。
一応そのときは借入できて助かったわけですよね。
しかも当時は法律違反とはされていなかった。
それを後になって返せとは、法的にはよくても倫理的にはどうなんでしょうね。

しかも、これは儲かるとなって弁護士や司法書士が群がって、今度はこちらの報酬を巡ってトラブルになっているというじゃありませんか(#`ε´#)

日弁連会長の宇都宮弁護士があるテレビ番組で言っていました。
「過払い金の払い戻し請求は消費者の生活再建のためになされるべき」

訴えればお金が戻ってくる!ラッキー!!
というものではないということです。

残念なことに、このような考え方が労務管理の世界に持ち込まれようとしています。

もちろん、払うべきものは払わなければなりません。
しかし、残業代も払わずに使えるだけこき使ってやろうなんて考えている社長はまずいません。
ほとんどが、給料は時間ではなく成果で払うものといった誤った理解のために起きているのです。

たしかにこれは、法的には明らかに間違いです。
でも経営的には間違いでしょうか。
社員のやりがいという面から見て間違いと言い切れるでしょうか。

単に法律に違反しているから、お金が手にはいるから、そんなことで会社を訴えることが本当に正しいのでしょうか。

おそらく、大企業よりも中小企業が狙い撃ちされるでしょう。
弁護士からしたらその方が簡単ですから。

そうなると財務的に脆弱な中小企業は、経営が立ちゆかなくなるかもしれません。
そこまでいかなくても、在職社員の賞与は減ることになるでしょう。
未払い残業代請求とはそれくらいインパクトのあるものです。