和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)

②業務命令はあったか
→黙示の業務命令に基づき行われていた


実際には、不動産事業部はこの社員に任せていたので、いちいち時間外や休日労働に業務命令を出していたわけではありません。
しかし、時間外や休日労働が必要なことは、少なくとも抽象的な形で認識していたとされ、明確に残業を禁止していたわけでもない。
もちろん明確に残業を認めていたわけではありませんが、知っていながら禁止もしてなかったということは黙示的に承認していた、簡単に言うと黙認していたということになります。

したがって、時間外や休日労働は黙示の業務命令に基づき行われていたとされました(>_<)

本来、時間外や休日労働は業務命令があって初めてなされるものですが、実際には社員の判断で行われています。
これを明確に禁止していない限り、業務命令があったとみなされてしまうので、「社員が勝手にしたことだ」という理屈はまず通りません。

未払い残業代請求では必ず争点になるので、よく覚えておきましょう!


③みなし残業手当になるか
→役職手当などを時間外・休日手当の代わりとする証拠はない


役職手当1万5000円、特別手当4万円、職能給2万2500円の合計7万7500円は時間外・休日手当の代わりと主張するが、就業規則や賃金規程にそのような記載はなく、そのような証拠はない。
仮に、社長がそのような認識で支払っていたとしても、だからといってそのような雇用契約の内容になるわけではない。

というわけで、みなし残業手当を裏付ける証拠はまったくなく認められませんでした(´д`lll)

これも、必ず会社が主張することですが、賃金規程や雇用契約書で明確に時間外・休日手当として支払う旨の記載がないと、まず間違いなく認められません。
本当にそのつもりで支払うのであれば、必ず書面に残しておかなければなりません。

(次回につづく)