取引上で不正があったのではないかと疑われている元従業員さんからクレームの電話が私にありました。「病気治療に専念して病気を早く治そうとして退社したのに、早朝から1日に何回も会社から携帯電話に電話がかかってくる。これでは精神的に参ってしまうので、どこに訴えたらよいか知恵を貸してもらいたい」と言うのです。
確かに、取引上で発生したトラブルを解決するために会社が本人に状況説明書の提出を求めているにも関わらず本人が中々提出してこなかったことは会社から聞いています。しかし、会社からは本人の病気に配慮して余り急かさないようにしているとも聞いていました。
取り敢えず本人には、会社責任者に今後は充分に注意するよう伝えること、会社と本人との窓口は一人に決めること等を約束しました。
しかし、このような場合、本人にどんなに事実を明らかにするように求めても、それは本人が認識している事実に過ぎず、取引先は別の事実認識をしていることがあります。そのため本人からはポイントを外さないように概要を聴いたうえで、早急に会社は取引先との交渉を始めることが必要です。そうすると本人が認識していなかった事実が明るみに出て真実に一歩近づけることが多いのです。本人から正確に事実を聞き出そうとして悪戯に時間を浪費してしまうよりも、取引先との交渉(場合によっては謝罪)を早期に開始することが大切です。
どうもこの会社は「分かってる、分かってる」と言いながら、やることのポイトがズレています。テレビ番組ではないのですが「知ってるつもり」なのではないかと思います。
因みに、数年前にパナソニックさんが温風ファンヒーターで死亡事故を起こしたとき、同社は事故原因の詳細調査は後回しにして謝罪とリコール運動を精力的に行いました。同時期にパロマも温風ファンヒーターで死亡事故を起しましたが、パロマは原因究明を優先させました。その結果、パナソニックさんはその後の業績が急好転したのに、パロマさんは転落していきました。顧客第一主義と口では各社が唱えていますが、こんなときに格差が生じます。
最近は、ノルマと称される目標管理が普及し、かつ景気低迷により企業間競争が激化していますから、取引上の不正疑惑や機密情報漏えい問題の相談が急増しています。
ただ私としては賞与支払届の回収と届出で飛び回っている日にこんな相談があるとかないません。