7月に会社のキャッシュがもうじき枯渇しそうだから廃業しようと考えている零細下請企業の社長から相談をうけました。7月中は何とか現状を打開する方策がないものかと検討をしましたが、経営上の危険水域は既に突破してしまっており、どうもこうもなりそうにないので廃業ではなく事業規模を大幅に縮小することを時間をかけて丁寧に提案し、同時に最後の足掻きをすることも提案しました。
その後、社長は最後の足掻きをされたようですが、最近ではそれも諦めたらしく超越した心境になられたようです。そこで、当初の予定通り、整理解雇日を9月賃金締切日に定め、8月賃金締切日に解雇予告をすることにしました。昨日は、その解雇予告通知書を社長にメールし、記載内容が事実と相違ないか確認するように連絡をしました。
日本の企業の場合は、なんとか最後まで踏ん張ろうとして特攻隊精神に陥り、銀行だけでなく街の金融機関(サラ金など)にまで手を出し、揚句の果ては破産しようにも破産できなくなってしまう経営者が多い中で、この社長は最後の最後まで自分の置かれている状況を冷静に考え、勇気ある決断をしたことは称賛に値すると思います。当面は従業員全員を整理解雇し家族だけで事業を継続させ、その中から今後生き延びる道を見つけ出していこうとされています。これは、決して従業員に対して無責任なのではなく、寧ろ従業員の生活に対して責任を持とうとしているからとの理由からの選択だと思います。
片や、顧問先の中には、経営危機に陥っているから色々な手立てを提案したものの、出来ない理由ばかりを言われ全く実行されない結果、毎月の賃金支払いは遅延気味で、本業で不足する資金を他の事業から転用している企業があります。他から転用できる資金があるからなんとか運よく維持できているものの、明日倒産しても可笑しくない状態です。社員さん達も十分にそのことは理解しており、もはや真面に働こうとはしていません。一部の幹部さんは不正を行っている疑いがあるとも噂されています。この経営者の選択も一つの生き様だから、その賛否を問う処ではないと思いますが、他からの資金が枯渇したときにはこの企業は倒産の道さえ残されていないかも知れません。この経営者も早く自分の置かれている状況を逃げずに理解し、自分と家族と社員の将来のことを考える必要があると思います。
私は11年前に倒産しましたが、自分の体験とその後体系的に学んだ学習とから考えると、前者の経営者を今後は応援したくなります。社労士として、いかに事業規模縮小を円滑に行うかに協力したいと考えています。私は「会社を元気にする社会保険労務士」ですが、既に死に体となっている会社を無理させてでも元気にはさせません。一端は体力回復を図るために後退してもらうこもとあります。一端は後退するももの、そこで体力を持ち直し、新しい時代の流れに沿える企業となり復活してもらうように手伝うこともあります。