会社が倒産しそうになり事業再生の相談をうけたときは、経営者が意思決定する前が大変に忙しい。資金繰り表又はキャッシュフロー計算書、損益計算書、決算書を急いでチェックし、銀行借り入れの担保となっている物件を確定しその価値を推測し、銀行との関係と連帯保証人は誰がなっているのかも確認したうえで、その連帯保証人との人間関係及び親族の中で誰か一時的なスポンサーとなってくれそうな人がいないかも確認し、会社の業務プロセスを急ぎ足で理解したうえで、いかにして経営資源の再配分を行い事業再生を図るかを検討して提案することが必要なのだ。そして、経営者の言うことが意外とあてにならないことが多い。過去の思い込みを元に経営者が説明することが多く、実態とかけ離れている場合が多い。場合によっては首切りリストラや賃金カットも検討しなくなることが多い。この場合には、経営者と従業員の信頼関係についても探りを入れておく必要がある。そして更に、M&Aの可能性も考慮しなければならない。
これらを考えたうえで経営者に事業再生をスケジュール化して提案することが必要なのだが、得てして経営者は未経験の場合が多く、知らないことに対する恐怖におののく余り意思決定能力を失っている場合もある。
経営者をいかに納得させるかで、その後の実行段階に大きな影響が及んでしまう。このときには、人間対人間として話し合い、私を理解してもらうことが必要となる。
ただ、実行段階になると、体は動かさなければならないが、意外と簡単で、当初のスケジュールに変更を加えながら、もっとも好ましい落としどころに持っていくだけだ。
兎に角、最初の準備段階のステップが非常に重要なのだ。
実は、いま事業再生(事業清算)の相談をうけています。ただ、今回の一番の問題は、経営者が知っている「つもり」になっている点にある稀なケースなのです。数年前に事業再生の相談をうけ、業績は回復し始めたのですが、今度は経営者が自信を取り戻して、まだ事業再生半ばだと言うのに自分で独走し始めた企業です。数年間は黒字化できましたが、所詮「知っているつもりの知識」に過ぎなかったので、再び赤字となりキャッシャフローも枯渇し今回に到りました。