和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

奈良県(医師時間外手当)事件(大阪高裁 H22.11.16判決)
(労働経済判例速報 通算2093号)


この事件は、産婦人科の医師が次の請求をしたものです。
①宿日直は時間外労働だとして割増手当を請求
②休みの日の呼出に備えて自宅待機(宅直)する時間は休日労働だとして割増手当を請求


主な争点は、宿日直や宅直の時間が労働時間かどうかという点ですが、併せて割増賃金の算定基礎額についても争点になりました(-""-;)

前者よりもむしろ後者について興味深い判断がありましたので、ブログでは後者について2回シリーズで解説したいと思います(^-^)/

ちなみに、宿日直については労働密度が薄いとはいえないとして割増手当の請求を認め、一方、宅直については医師が自主的にしており(会社の命令はなかった)、負担も加重ではないとして割増手当の請求を棄却しました。

さて、1回目は「期末手当は割増賃金の算定基礎に含まれるのか?」ということです。
期末手当とは、公務員の賞与です。

「賞与なら含まれないでしょ!」

たしかにそうですが、賞与でもあらかじめ金額が決められているものは含めなければなりません(-_-メ

よく年俸制の場合に、年収を16等分して12を月給に4を夏冬の賞与になどとすることがありますが、この賞与は金額が確定しているので、算定基礎額に含めなければならないのです。

オーマイゴット\(゜□゜)/

これを知らないで、月給だけで割増計算している会社も多いようですが、残業代の未払いになってしまうので注意が必要です。

公務員の賞与には、期末手当と勤勉手当があり、期末手当は定額で勤勉手当は変動します。
そうすると、定額の期末手当は算定基礎額に含めなければならないような気がしますが、裁判では次のように言って含めなくていいとしています。

「その計算には在職期間の割合が考慮され、停職、休職等がある場合には、その期間は在職期間から控除されることが認められるから、支給額が一律に確定しているということはできない」

個人的には定額か変動かの判断は、本人の業績によるものであり勤務状況によるものではないと思うのですが、裁判所は勤務状況により変動すれば定額ではないとしています。

個人的な考えはともかく、これは会社にとっては都合のいい解釈です( ̄▽+ ̄*)

たとえば、先の年俸制の会社でも、賞与は4か月分としながらも、停職、休職の他、欠勤・遅刻・早退、産前産後休業、育児・介護休業などで減額するとしていれば、これは固定ではないということになります(^_^)v

こういうことでの減額は普通に行われているので、就業規則や給与規程にきちんと定めておけば、算定基礎に含めない理由として主張できるものと思われますo(^▽^)o

(次回につづく)