2007年 5月の記事一覧

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07年05月12日 15時19分53秒
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「就業規則を変更し、これまでの定年制度を改正したため、それまで定年制の適用がなかった者が定年制の対象となり、解雇されたもの」である。

 これは、秋北バス事件であり、最高裁(最判S43,12,25)は次のように判示した。

 就業規則の法規範性を認めた上で、「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されない」と解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、「当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」と解するべきであるとしました。

 つまり、就業規則が合理的なものであれば、労働者は、就業規則の存在・内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるということです。

 使用者は、就業規則の作成・変更をする場合、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の「意見」を聴かなければなりませんが、「同意」までは必要ないということには、注意する必要があります。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。

07年05月09日 16時18分16秒
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「3ヶ月の試用期間を設けて採用された者が、採用試験の際に提出を求めた身上書の所定の記載欄に虚偽の記載をし、または記載すべき事項を秘匿し、面接試験における質問に対しても虚偽の回答をしたことを理由として、試用期間の満了直前に、本採用を拒否されたもの」である。

 有名な三菱樹脂事件であるが、最高裁(最判S48,12,12)は次のように判示した。

1 企業者は、経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するに     当たり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであって、企業者が特定の思想・信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。

2 また、当該雇用契約を解約権留保付の雇用契約と認め、採用拒否は雇入れ後における解雇に当たるとし、当該留保約款の合理性を肯定した上で、留保解約権に基づく解雇と通常の解雇とを区別し、前者の場合は後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものとした。

3 そして、企業者が、採用決定後における調査により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨・目的に徴して、「客観的に相当であると認められる場合」には、さきに留保した解約権を行使することができる。

 この判例については、様々な憲法上の論点を孕む上に、企業者の裁量を広く認めすぎているきらいもあるが、「客観的相当性」がない場合には留保解約権を行使することができない、という点には注意しなければならない。

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07年05月08日 19時14分05秒
Posted by: marutahoumuj
 今回から、労働関係に関するものも記事にしたいと思っています。

 まず手始めは、試行雇用契約と試用期間の違いです。

 試行雇用契約は、「試用を目的とする有期労働契約」であって、企業が労働者の適性や能力を見極めた上で本採用にするか否かを決めるものです。

 これに対し、試用期間というのは、「期間の定めのない労働契約」であることを前提に、試用期間を設けるものです。

 この両者は、概念的には「契約存続期間」と「試用期間」と明確に区別することができるのですが、具体的ケースでは問題になることがあります。

 そこで、最高裁は、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は「契約の存続期間」ではなく、「試用期間」であると解するのが相当である。」と判示しています(最判H2・6・5)。

 つまり、このような場合、原則として期間の定めのない契約における「試用期間」であって、例外的に期間満了で当然に雇用契約が終了するとの明確な合意がなされているような特段の事情があるときに限って、「契約存続期間」となる、というものです。

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