事案は、「就業規則を変更し、これまでの定年制度を改正したため、それまで定年制の適用がなかった者が定年制の対象となり、解雇されたもの」である。

 これは、秋北バス事件であり、最高裁(最判S43,12,25)は次のように判示した。

 就業規則の法規範性を認めた上で、「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されない」と解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、「当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」と解するべきであるとしました。

 つまり、就業規則が合理的なものであれば、労働者は、就業規則の存在・内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるということです。

 使用者は、就業規則の作成・変更をする場合、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の「意見」を聴かなければなりませんが、「同意」までは必要ないということには、注意する必要があります。

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