有給休暇手当の支払い方に通常賃金、平均賃金、標準報酬月額の3つの方式があります。平均賃金、標準報酬月額は自動的に計算できますから問題が起きません。通常の賃金はなかなかの曲者です。

 月給者も大きな問題はおきません。問題は日給や時給で賃金を計算するときの特殊なケースです。多くの場合、日給者には日給額を、時給者には時給×所定労働時間で有給休暇手当は計算できます。

 次のケースはどうでしょうか。

 夜間の警備員です。夜の9時から朝の6時までの勤務です。時給は1,000円。この人の有給休暇手当は、いくらになるでしょうか。問題は、深夜勤務手当を支給するかしないか、です。深夜に勤務していないから「支給しない」とも考えられます。が、この場合は「通常」の賃金を支給することが主旨ですので、「支給する」となるでしょう。

 もう一つのケースは如何でしょうか。

 サービス業の会社で、年中無休です。当然、シフトを組んで勤務することになります。労働基準法上の法定休日は確保されています。ですから、日曜日や祝日、正月3が日に出勤することになっても休日手当の支払い義務はありません。しかし、日曜日や祝日に出勤させることは家庭を犠牲にすることになるので、この会社では独自の休日手当を支給することにしていました。
 さて、この休日に有給休暇を取った時の有給休暇手当には、独自の休日手当は加算しなくてはいけないのか、それともしなくていいのか。通常、日曜日に出勤すれば休日手当は支給されます。これを通常の賃金と考えれば、休日手当を加算しなければなりません。

 この事例の、行政解釈や判例を見たことがありません。しかし、弊事務所では、このケースは「加算しなくてよい」と解釈しています。もともと法的には支給しなくてもよい手当を、親心的に休日に家庭サービスができない補償として支給したものです。その日に有給休暇を取得するときには補償しなくてならない意味がありません。違うケースで外で働く人に雨が降ったら「雨手当」を支給している会社もあります。有給休暇を取得した日にたまたま雨が降ったら「雨手当」も支給しなければいけない、としたらやはりおかしいでしょう。

 このように、有給休暇手当も中々難しいものです。色々と考えさせられます。

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