日本大学医学部(東京都板橋区)付属病院で研修中に自殺した埼玉県の女性医師(当時26)について、池袋労働基準監督署が労災認定していたことが17日わかった。遺族側が「週40時間の法定時間を大きく上回る週87時間勤務があり、自殺は、過労でうつ状態になったことが原因」として労災申請し、今年2月に認められた。

 厚生労働省によると、現行の臨床研修制度が始まってから、研修医の自殺が労災認定されたのは初めて。

 遺族側の弁護士や父親(58)によると、女性は05年4月から日大医学部付属病院で2年間の臨床研修を始めていたが、翌年4月21日、病院から持ち出した筋弛緩(しかん)剤を自宅で注射し、死亡した。

 勤務状況を調べたところ、最初に研修した救命救急センターでの勤務時間は多い週で78時間。日当直は月10回あった。夏からの消化器外科では、多い時で週87時間勤務していた。秋ごろから元気がなくなり、06年2月ごろから、疲労感や抑うつ、意欲低下などの症状を訴えた。家族には「辞めたい」「当直のない世界に行きたい」などと漏らしたという。日当直は年間77回に及んでいた。4月には研修を休みがちになり、心療内科も受診していた。

 遺族側は、大学側に調査を求めたが、報告書は過重労働について触れられておらず、実態が分からなかったという。そのため同年8月、労基署に労災申請した。父親は「臨床研修制度は、数カ月ごとの診療科のローテーションで職場が変わる。研修医の労働管理をしてくれる人がおらず、酷使されてしまう。大学も当直回数を守っていない。厚労省も指導してほしい」と話している。

 日大医学部庶務課は「代理人を通じて遺族と協議中なのでコメントは差し控えたい」としている。