事案は、「Xの夫であり、個人事業主である訴外Aは、当初、重機を単体又は運転業務付で貸し付けてその対価を受領する業務を営んでいたが、その後、土木工事請負業務も行うようになった。もっとも、Aが雇用する4名前後の労働者らは、後者の業務にのみ従事していた。  Aは、昭和61年5月14日、労働者災害補償保険法27条1号(現33条1号)にいう「事業主」として長男である訴外Bと共に労災保険への特別加入を認められる。Aが提出した特別加入申請書の「業務の内容」欄には「土木作業経営全般」と記載されていた。  訴外T会社から掘削機1台のリースの依頼を受けていたAは、昭和62年12月8日午後8時30分頃、Bや加勢に応じた訴外Cとともに、T会社指定の場所でトラックの荷台から当該掘削機を降ろす作業中、昇降版が外れたために転落してきた同機の下敷きとなって即死した。Xは、Aが労災保険の特別加入者であること、右災害が業務上の事由により生じたことを理由として、葬祭料の支給をYに請求したが、Yは、昭和63年2月25日、葬祭料の不支給処分を下した。当該処分の不服申立が斥けられたXは、その取消請求訴訟を提起したもの」である。

 これは、姫路労基署長(井口重機)事件であるが、最高裁(最判H9,1,23)は次のように判示した。

1 労働者災害補償保険法27条1号(現33条1号)所定の事業主の特別加入の制度は、労働者に関し成立している労災保険に係る労働保険の保険関係を前提として、右保険関係上、事業主を労働者とみなすことにより、当該事業主に対する同法の適用を可能とする制度である。

2 認定事実等によれば、Aは、土木工事及び重機・・・・・賃貸を業として行っていた者であるが、その使用する労働者を・・・・・建設事業の下請として・・・・・土木工事にのみ従事させており、重機・・・・・賃貸については、労働者を使用することなく、請負に係る土木工事と無関係に行っていたというのである。そうであれば、同法28条(現34条)に基づきAの加入申請が承認されたことによって、その・・・・・・土木工事が関係する建設事業につき保険関係が成立したに留まり、・・・・・重機・・・・賃貸業務については、労働者に関し保険関係が成立していないものといわざるを得ないのであるから、Aは・・・・・業務に起因する死亡等に関し、同法に基づく保険給付を受けることができる者となる余地はない。したがって、・・・・・原審の判断は、説示中に適切を欠く部分があるが、結論において是認することができる。

 特別加入者は一般の労働者と異なり、労働契約等によって業務内容が特定されていないため、業務災害等の認定については、特別加入に係る申請書に記載された業務または作業の内容を基礎として、厚生労働省労働基準局長が定める基準によって行うこととされています。

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