事案は、「Xら21名は、Y会社の従業員であり、これをもって組織する訴外労働組合の組合員である。昭和48年1月30日、右組合はYに対し、2月1日以降出張・外勤拒否等の闘争に入る旨を通告。対するにYは同月5日から14日までの間、Xらに出張・外勤を文書で命じたが、Xらはこれを拒否、この間もっぱら内勤業務に従事した。かくてYは、Xらが右命令を拒否した間の賃金を過払い分として翌3月分の給与から控除。そこで、Xらは、かかる賃金カットを違法として、控除された賃金の支払を訴求したもの」である。

 これは、水道機工事件であるが、最高裁(最判S60,3,7)は次のように判示して、Xらの上告を棄却した。

 原審は、・・・・・・・・・・・・・・本件業務命令は、組合の争議行為を否定するような性質のものではないし、従来の慣行を無視したものとして信義則に反するというものでもなく、「Xらが、本件業務命令によって指定された時間、その指定された出張・外勤に従事せず内勤業務に従事したことは、債務の本旨に従った労務の提供をしたとはいえず、また、Yは、本件業務命令を事前に発したことにより、その指定した時間については出張・外勤以外の労務の受領をあらかじめ拒絶したものと解すべきであるから、Xらが提供した内勤業務についての労務を受領したものとはいえず、したがって、Yは、Xらに対し右の時間に対応する賃金の支払義務を負うものではない」と判断している。原審の右判断は、・・・・・・・・・・・・・・・正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

 出張・外勤命令が事前に発せられたことをもって、これ以外の労務の受領を予め使用者が拒絶したものと解する論理構成は、シックリしないものがある。使用者の争議行為として限定的に認めたロックアウトに関する最高裁の立場と整合性を有するのであろうか。

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