事案は、「ホテルオークラの従業員で組織する労働組合は、賃上げ闘争の一環として、就業時間中にリボンを着用するいわゆるリボン闘争を2回にわたり実施し、各回とも当日就業した従業員の一部の者が参加した。胸に着用したリボンは、布地により紅白の花もしくは桃の花をあしらいそこから幅2,5センチメートル、長さ6〜11センチメートルの白布地を垂らしたもので、その白布地の部分に「要求貫徹」あるいはそれに加えて「ホテル労連」の文字が黒色もしくは朱色スタンプで印されていた。会社は、リボン闘争を実施しないよう警告したが組合がそれを無視して実施したので、組合幹部5人の幹部責任を問い、減給及び譴責の懲戒処分を行った。 処分を受けた組合幹部が懲戒処分は不当労働行為に該当するとして救済の申立を行ったところ、都労委は救済を認容し、処分の取消と減給にかかる賃金相当分の支払を命じた。そこで、会社は、命令の取消を求める行政訴訟を起こしたもの」である。

 これは、大成観光事件であるが、最高裁(最判S57,4,13)は、原審の判断を是認し、上告を棄却した。

 第1審の東京地裁は、「一般にリボン闘争は、組合活動の面においては経済的公正を欠き誠実に労務に服すべき労働者の義務に違背するが故に、また争議行為の面においては労働者に心理的二重構造をもたらし、また、使用者はこのような戦術に対抗しうる争議手段をもたないが故に、違法であること、また、ホテル業におけるリボン闘争は、業務の正常な運営を阻害する意味合いが強いので、特別の違法性を有することを理由として、本件懲戒処分は不当労働行為に該当しないものと判断し、救済命令を取消した。」

 第2審の東京高裁は、一部理由を修正したほか第1審判決を支持し、控訴を棄却した。これに対して、都労委が上告したものである。

 この最高裁の判決は、およそリボン闘争はすべて正当性を欠くとの立場に立つのか、それとも本件事案のようなホテル業におけるリボン闘争に限って正当性を否定する趣旨なのか、明確でないことに注意する必要があります。

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