上場121社:ここまでやると懲戒解雇 使い込み100万円、無断欠勤2週間…


 ◇使い込み100万円、無断欠勤2週間、酒酔い運転逮捕



 酒酔い運転は厳罰、部下との不倫での処分は判断に迷う−−。企業のコンプライアンス(法令順守)に厳しい目が向けられる中、企業の懲戒処分の実態調査でこんな傾向が浮かび上がった。



 調査は財団法人労務行政研究所(東京都港区)が実施した。上場企業を中心にアンケートを行い、121社から回答を得た。「売上金100万円を使い込んだ」「妻子ある上司が部下と不倫を続けている」など30のモデルケースを挙げ、会社での過去のケースを参考に処分なしから懲戒解雇までどのような処分をするか聞いた。



 退職金が全く支払われないケースが多く、最も処分の重い懲戒解雇となるのは「100万円の使い込み」(70・6%)で、次いで「無断欠勤2週間」(68・8%)、「秘密漏えい」(54・1%)だった。



 また、「終業後に酒酔い運転で、物損事故を起こし逮捕」での懲戒解雇は40・4%だった。このケースの4年前の調査では、出勤停止が最も多い処分で28・2%、懲戒解雇は22・6%だったことから、厳罰化が進んでいることが分かる。



 一方、「社内不倫」の懲戒解雇は5・5%で「判断できない」が26・6%、「社内通報せず直接マスコミに内部告発した」でも「判断できない」が41・3%と線引きが難しいケースもあった。



 同研究所では「酒酔い運転や情報漏えいなど社会問題化しているケースは重い処分になっている。社会が多様化する中で、企業がどの程度の処分が適当か判断に迷う場面も増えているのではないか」と分析している。



 ◇懲戒解雇になる割合が高い



 <1>売上金100万円を使い込んだ                    70.6%



 <2>無断欠勤が2週間に及んだ                      68.8%



 <3>社外秘の重要機密を漏えいさせた                   54.1%



 <4>終業時刻後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された        40.4%



 <5>社内で私的な理由から同僚に暴力をふるい、全治10日の傷を負わせた  38.5%



 <6>満員電車で痴漢行為を行ったことが被害者からの訴えで判明した     36.7%



 <7>基準を超える取引を独断で行い、会社に1億円の損害を与えた      34.9%



 <7>取引先から個人的に謝礼金等を受領していた              34.9%



 <9>同僚にストーカー行為を繰り返して、被害を訴えられた         32.1%



<10>コンピューターに保存されている重要なデータやプログラムを改ざんした 30.3%



 ◇割合が低い



 <1>社有車をしばしば私用に使っていることが判明した            1.8%



 <2>同僚の売上金の流用を知りながら、報告しなかった            2.8%



 <2>車で営業中に得意先から携帯電話が入り、話に熱中して事故を起こした   2.8%



 <2>会社の金庫のかぎを掛け忘れてしまい、公金の盗難にあった        2.8%



 <2>クレジットカードによる買い物のしすぎで自己破産の宣告を受けた     2.8%



                               毎日新聞 2007年9月22日 



* 就業規則には、懲戒解雇事由が規定されるのが通常であるが、すべての事由を規定することはできないため、主なものを例示した後「その他全各号に準ずる程度の行為があったとき」と定める。その規定により、懲戒解雇事由か否かが判断される。

 この調査は、上場企業なので大会社が中心であるが、中小企業の場合若干数値が変わりうると思う。