2007年 3月の記事一覧

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07年03月29日 17時11分51秒
Posted by: marutahoumuj
 年金分割制度については、以前記事にしましたが、この制度の施行がいよいよ秒読みの段階になって参りましたので、もう一度記事にしたいと思います。

 一昨秋放送されたドラマ「熟年離婚」の衝撃は、その後も収まっていないのか。厚生労働省の調査によれば、昭和50年の離婚総数は12万件弱で、そのうち同居期間30年以上の夫婦の離婚は866件に過ぎなかったのに対し、平成16年では離婚総数は27万件強(約2,3倍)に増えたが、同じく同居期間30年以上の夫婦の離婚は、1万1468件とおよそ13倍にもなったようである。

 昨年の10月から年金に関する情報提供サービスが始まりましたが、社会保険庁によれば、全国の社会保険事務所を中心とする昨年10月から今年2月までの年金相談件数は、およそ2万5000件であり、そのうち情報提供請求件数は約6000件、情報通知書交付件数は約5000件であり、いずれも9割弱が女性からの請求によるものであったようである。

 これらの資料と、近時の離婚件数が平成14年の約29万件をピークに、毎年およそ1万件ずつ減少してきているという事実からすれば、妻が離婚を控えてきたというのは疑いないと思われます。

 しかし、前にも述べましたが、年金分割ができるのは、婚姻期間中のしかも報酬比例部分に過ぎません。報酬比例部分は平均して十数万円だと思われますから、仮に2分の1が分割されたとしても、妻は自分の老齢基礎年金と合わせても10万を少し超えるくらいだと思われます。「年金分割制度」という言葉が独り歩きをしているのです。この程度の額であれば、離婚後自分が働かなければならない、ということも視野に入れておかなければなりません。

 離婚後の生活基盤を考える上で、夫の厚生年金をどの程度分割してもらえるのか、確実な情報が必要です。年金手帳と戸籍謄本(抄本)をもって、最寄の社会保険事務所に情報提供請求をしてみましょう。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。

 今回はこの辺で。

07年03月16日 17時00分02秒
Posted by: marutahoumuj
 皆さんご存知のとおり、この4月から離婚時の厚生年金(公務員等の共済年金は置いときます)の分割制度が始まります。この制度は、平成19年4月1日以後に離婚等をした場合において、当事者の合意や調停・審判・訴訟手続により按分割合を定めたときには、当事者の一方からの請求によって、「婚姻期間中」の「保険料納付記録」を分割することができる制度です。保険料納付記録とは、厚生年金保険料の算定の基礎となった標準報酬(標準報酬月額と標準賞与額)のことを指します。この標準報酬を基礎として、厚生年金の年金額を計算します。

 従来も、離婚時の財産分与の一部として、「年金額」を分割していました。しかし、一旦別れた夫から月々振り込んでもらうことの後ろめたさや、振込みが途絶えた場合のトラブルなどを回避するため、新しい制度として、「保険料納付記録」を分割することにしました。これにより、「夫」(通常分割する方は夫であることを前提とします。)に受給権が発生してからもらえるのではなく、「妻」に受給権が発生してからもらえる制度である、ことに注意を要します。したがって、従来、夫が亡くなるともらえなかったのが、4月以降は夫が亡くなっても、自分自身の権利として生涯もらえることになりますが、妻自身に年金の受給資格がないと、分割された年金をもらえないことには留意する必要があります。老齢年金をもらうためには、国民年金・厚生年金等の公的年金に原則として25年以上加入することが必要なのです。

 この年金分割制度を睨んでなのか、離婚件数が、平成14年度の約29万件をピークに、15年度約28万件、16年度約27万件、17年度約26万件と減少しています。それでも2分に一組の夫婦が離婚している計算になるようです。昨年の10月から、按分割合を定めるのに必要な分割の対象となる期間や、その期間における当事者それぞれの標準報酬総額、按分割合の範囲等の情報の提供を、住所地の社会保険事務所に請求することができることになりました。そのせいか、昨年の暮れに私が某社会保険事務所を訪れた時、年金相談の部署だけがヤケに混雑していました。

 それはさておき、私が、年金分割制度を念頭に離婚を考えている方に注意を促したいのは、(1)夫がもらう年金はすべて分割できるのではなく、「婚姻期間中」の保険料納付記録に限るということと、(2)分割で夫の年金の一部がすぐにもらえるのではなく、自分の年金受給権が発生してからもらえるということ、の2点です。(1)について言えば、婚姻期間が短いと分割される額もビビたるものとなるし、婚姻期間が長くても、例えば仮に年金額が月20万円として、夫婦であれば何とか暮らしていけるのに、分割により折半して10万円ずつということになれば、共倒れになる可能性があるのです。(2)について言えば、夫が年金をもらっていても、妻自身が受給年齢前ならばまだもらえないだけでなく、自分自身に年金の受給資格がなければ、分割された年金をもらえないことになるのです。

 離婚を決意した方に、それを思い止まりなさいという資格は私にはありませんが、年金分割制度を過度に評価しないで、慎重に考える必要があります。まずは、社会保険事務所に、情報の提供を請求してみては如何でしょう。その際、請求者自身の年金手帳(国民年金手帳)と戸籍謄本(抄本)が必要となります。

 今回はこの辺で。
07年03月10日 18時19分17秒
Posted by: marutahoumuj
 民法734条は、直系血族又は三親等内の傍系血族間の婚姻を禁止している。近親婚の禁止は、その範囲に広狭があるとはいえ、各国に共通している。この「血族」には、自然血族だけでなく法定血族をも含み、前者は優生学上の配慮に基づき、後者は倫理的観念に基づくものとされている。

 また、厚生年金保険法は、遺族厚生年金を受けることができる遺族としての「配偶者」には、婚姻届をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むと規定している。

 ここにおいて、民法の近親者間の婚姻禁止規定に違反する内縁関係が、遺族厚生年金の受給権に影響を及ぼすのかどうか、という問題が生じてきます。

 この点に関して、42年間に亘って叔父と内縁関係にあった女性が、「近親婚は民法で禁止されている」との理由で不支給処分をした社会保険庁を相手取り、その処分の取消しを求めた訴訟の最高裁判決が、8日ありました。判決は、「親子のような直系血族間や兄弟のような傍系血族間では、反倫理性、反公益性が大きく受給権は認められない。このことは、三親等の傍系血族間の内縁関係も基本的には変わらない。」とした上で、「叔父と姪のような三親等間の内縁関係については、経緯や周囲の受け止め方、期間や子供の有無などに照らし、反倫理性や反公益性が著しく低いと認められるような特段の事情があれば、受給権が認められる。」として、請求を棄却した二審判決を破棄し、受給資格を認めた一審判決を支持したのです。

 最高裁の判決は、叔父と姪のような三親等間の内縁関係であれば、常に受給権が認められるとしたのではなく、反倫理性・反公益性が著しく低いと認められるような特段の事情があれば、受給権が認められるとしたことに注意を要します。

 一般に、法の解釈適用は、法的安定性と具体的妥当性との調整にあると解されていますが、概して法的安定性を重視すれば具体的妥当性に欠け、逆に具体的妥当性を重視すれば法的安定性に欠ける、という結果をもたらします。最高裁は、具体的妥当性を選択したものと思われますが、今後、社会保険庁はどのような事情があれば、受給権が認められる「特段の事情」に当たるのかという判断を迫られることになります。

 今回はこの辺で。
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