事案は、「テレビ放送事業等を営むYは業務請負契約に基づいて派遣された阪神東通など3社の従業員を撮影、音響効果、照明等の番組制作業務に従事させていた。業務請負という形式にも拘らず実際には、Yの器材等を使用し、彼らはYの作業秩序に組み込まれて、1ヶ月毎にYが作成する、日別に番組名、作業の開始時刻、場所等を記した編成日程表と台本及び制作進行表による作業の内容・手順に従い、作業時間の変更、残業等を含め作業の進行はすべてY従業員であるディレクターの指揮の下に行われていた。 請負3社の従業員らで組織する民放労連近畿地区労働組合Xは、昭和49年9月以降、直接雇用、賃上げ、一時金、休憩室の設置を含む労働条件の改善等について団体交渉を申し入れたが、Yは「使用者」ではないことを理由に拒否したので、団交拒否の不当労働行為として救済を申し立てた。 大阪地労委は、Yの使用者性を認め、中労委も一定の事項を除き使用者性を認めた。 そこで、Yが、中労委命令の取消訴訟を提起したもの」である。

 これは、朝日放送事件であるが、最高裁(最判H7,2,28)は次のように判示した。

1 団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復するという労組法7条の目的に鑑み、労働契約上の雇用主以外でも、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて・・・・・・同条の「使用者」に当たる。

2 Yは、請負3社から派遣される従業員が従事すべき業務の全般につき、編成日程表、台本及び制作進行表の作成を通じて、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで自ら決定していたこと、請負3社は、単に、ほぼ固定している一定の従業員のうちのだれをどの番組制作業務に従事させるかを決定していたにすぎない・・・・・こと、・・・・・・・・請負3社の従業員は・・・・・・・Yから支給ないし貸与される器材等を使用し、その作業秩序に組み込まれてYの従業員と共に番組制作業務に従事していたこと、請負3社の従業員の作業の進行は、作業時間帯の変更、作業時間の延長、休憩等の点についても、すべてYの従業員であるディレクターの指揮監督下に置かれていたこと・・・・・を総合すれば、Yは実質的にみて、請負3社から派遣される従業員の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定していたのであり、右従業員の基本的な労働条件等について、雇用主である請負3社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったから、その限りにおいて、労組法7条にいう「使用者」に当たる。

3 そうすると、Yが自ら決定することのできる労働条件(本件命令中の「番組制作業務に関する勤務の割付など就労に係る諸条件」はこれに含まれる)の改善を求める部分については、Yが正当な理由がなく団体交渉を拒否することは許されず、これを拒否したYの行為は、労働組合法7条2号の不当労働行為を構成する。

 不当労働行為制度は、団結権侵害行為を実効的に排除して使用者の妨害・抑圧から自由な組合活動を保障するための制度であり、労働契約上の責任を追及するものではないから、不当労働行為の主体たる「使用者」を契約の相手方たる使用者に限定すべき必然性はないのである。

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