事案は、「Xは、国鉄改革にともない旧国鉄が名称変更されたYに雇用される職員であるが、本件当時、国鉄津田沼電車区運転検修係の職務に従事し、動労千葉津田沼支部執行委員であった。同電車区には、Xの所属する検修部門のほか列車乗務員部門等があったが、年次休暇の請求に対する時季変更権の行使・不行使は、電車区長が決定していたものであり、労働基準法36条の適用に当たっては、同電車区は一つの事業場として扱われてきた。 動労千葉は、国鉄民営化阻止等を目標に掲げ、当初の予定を前日に繰り上げて昭和60年11月28日正午から翌日29日正午まで24時間にわたり、津田沼電車区等を拠点として、旅客列車乗務員を対象とする指名ストライキを実施し、これにより、多数の旅客列車等が運休、遅延するなどの影響が生じた。 Xは、同月21日津田沼電車区長に対し、同月28日の午後半日の年休を請求していたが、動労千葉が29日に予定していたストライキを繰り上げて同月28日正午からとしたことを知ると、当局にただして年休の請求が事実上承認されていることを確認しながら、右請求をそのまま維持した上、同月28日午後は勤務しなかった。その間、Xは、津田沼電車区内で、組合員集会に参加し、スト決起集会では、シュプレヒコールの指揮をし、また、当局側に対する抗議行動に参加するなどして、右争議行為に積極的役割を果たした。 Yは、当日のXの欠勤を年休として取扱わず、賃金カットを行ったのに対し、Xが提訴したもの」である。

 これは、国鉄津田沼電車区事件であるが、最高裁(最判H3,11,19)は次のように判示した。

 上告人(X)は、前記争議行為に参加しその所属する事業場である津田沼電車区の正常な業務の運営を阻害する目的をもって、たまたま先にした年次休暇の請求を当局側が事実上承認しているのを幸い、この請求を維持し、職場を離脱したものであって、右のような職場離脱は、労働基準法の適用される事業場において業務を運営するための正常な勤務体制が存在することを前提としてその枠内で休暇を認めるという年次有給休暇の趣旨に反するというべく、本来の年次休暇権の行使とはいえないから、上告人の請求にかかる時季指定日に年次休暇は成立しないというべきである。以上と同趣旨に出たものと認められる原審の判断は、正当として是認することができる。

 本件は、組合指令による争議目的利用のための年休取得の事案ではないことに注意する必要があります。年休自由利用の原則の限界を判示したものである。

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