事案は、「Y会社の就業規則には、女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができ、そのうち年間24日を有給とすると定められていた。Y会社はこれを、Xら及びXら所属の労働組合の同意を得ないままで、女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができ、そのうち月2日を限度とし、1日につき基本給1日分の68%を補償するという規定に変更した。Xらは、Yに対し、右の新規定の下で生理休暇の取得により減額された賃金の支払を請求したもの」である。

 これは、タケダシステム事件であるが、最高裁(最判S58,11,25)は、次のように判示して、Xらの請求を認容した原審を破棄し、差し戻した。

1 新たな就業規則の作成または変更によって、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないが、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由としてその適用を拒むことは許されないと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであって、今これを変更する必要をみない。

2 したがって、本件就業規則の変更がXらにとって不利益なものであるにしても、右変更が合理的なものであれば、Xらにおいて、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないというべきである。そして、右変更が合理的なものであるか否かを判断するに当たっては、変更の内容及び必要性の両面からの考察が要求され、右変更により従業員の被る不利益の程度、右変更との関連の下に行われた賃金の改善状況のほか、Y主張のように、旧規定の下において有給生理休暇の取得について濫用があり、社内規律の保持及び従業員の公平な処遇のため右変更が必要であったか否かを検討し、更には労働組合との交渉の経過、他の従業員の対応、関連会社の取扱い、我が国社会における生理休暇制度の一般的状況等の諸事情を総合勘案する必要がある。

3 原審が、長期的に実質賃金の低下を生ずるような就業規則の変更はそもそも許されないとの見解の下に、本件の変更が合理的なものか否かに触れることなく、それはXらに対し効力を生じないと速断したのは、就業規則に関する法令の解釈適用を誤ったものである。

 前にも述べましたが、就業規則の変更には、労働組合等の意見を聞く必要はありますが、同意までは要求されません。ただし、それが「合理的」なものでなければなりません。

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