事案は、「高校卒業予定の者が、入社試験を受け、採用通知を受領した。採用通知を受領する 直前に、反戦青年委員会の一員として集会に参加したが、無届デモとして規制を受け、逮捕され執行猶予処分を受けたが、会社はこの事実を知らないで、採用通知をしたものであるが、後日、知るところとなり、採用取消通知をなしたもの」である。

 これは、電電公社近畿電通局事件であるが、最高裁(最判S55,5,30)は次のように判示した。

1 社員公募に応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する採用通知はこの申し込み に対する承諾であって、これにより、両者の間に、いわゆる採用内定の一態様として、労働契約 の効力発生の始期を右採用通知に明示された昭和45年4月1日とする労働契約が成立したと 解するのが相当である。

2 そして、右労働契約においては、再度の健康診断で異常が会った場合又は誓約書等を所定の期日までに提出しない場合には採用を取消しうるものとしているが、解約権の留保は右の場合に 限られるものではなく、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実 であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に 合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができる場合」をも含むと解するのが相当 であり、本件採用取消の通知は、右解約権に基づく解約申入れとみるべきである。

3 以上を前提に、会社が、現行犯逮捕、起訴猶予処分を受けるような違法行為を積極的に敢行し た者を見習社員として雇用することは相当でなく、見習社員としての適格性を欠くと判断し、本件 採用の取消をしたことは、「解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当」として是認する ことができるから、解約権の行使は有効と解すべきである。

  ここで注意しなければならないのは、採用内定を取消すことができるのは、採用通知や誓約書等 に記載された取消事由に限定されないということです。

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