採用から解雇まで、企業と従業員の雇用ルールを定める新法、労働契約法の法案要綱が24日、明らかになった。賃金制度や勤務時間などの就業規則を労働者に不利に変更する場合は、「労働者との合意」を前提にすることを明記し、労働側に一定の配慮を示した。一方で、「不利益の程度」などに合理性が認められれば、合意なしに就業規則を変更できるとしており、労働者に不利な変更をめぐる紛争が、これまで同様、起き続ける可能性がある。

 厚生労働省は25日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に示し、通常国会に法案を提出する予定。

 現行の労働基準法では、就業規則は労働者の合意がなくても、意見聴取をすれば会社が作成・変更できる。ただ、賃下げなど労働者に不利な変更に制限をかける規定がなく、労働者が訴えて変更の有効性を争う裁判が相次ぎ、ルールの明確化が求められていた。

 昨年末に公表された労政審の報告書では、法的位置づけがあいまいだった就業規則を、企業と労働者との労働契約と見なす一方、合理的な変更であれば会社が就業規則を変更できるとした。これに対し、労働法学者や労働界が「契約は当事者の合意が基本原則のはずだ」などと反発。このため、要綱では「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則の変更で、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない」との文言を新たに加えた。

 しかし、合意がなくても、労働者に変更を知らせ、変更内容が合理的であれば、不利な変更もできるとの例外規定を設けた。合理的かどうかの判断基準としては、これまでの判例をもとに(1)労働者の受ける不利益の程度(2)労働条件の変更の必要性(3)変更後の内容の相当性(4)労働組合などとの交渉状況――の4点を挙げた。

 変更が合理的かどうかの実際の判断は、今後も個別の裁判に委ねられると見られ、労働契約法の制定が、労使紛争の未然防止に役立つかどうかは不透明だ。