京都で、てんかんの発作に起因すると見られる痛ましい事故が発生しました。亡くなられた方のご冥福をお祈りすると共に、負傷された方は1日も早く回復されるようお見舞い申し上げます。

私たちは、労務管理に関するアドバイスを主たる業務として行なっていますので、持病のある社員の健康に配慮しながら、その行なう業務についてどう管理していくかという点については良く相談をうけます。

てんかんの患者については、仕事中に発作が起こった場合の支援体制や安全配慮義務について明確な基準を設けにくいことから、事業主にとってリスクが大きく、事前に分っていれば採用を回避したい気持ちが働くものと思われます。(採用されないというわけではありません、念のため・・・)そのため、てんかんの持病を持つ方も、その事実を隠して面接を受けられる方も多い様です。

この様な大きい事故が起きたばかりなので、てんかんの持病を持ちながら働いている方で勤務先に内緒にしている方の悩みは大きく、その心痛もさぞ大きいことと察します。今回は、使用する従業員からてんかんの持病があることを告げられた場合について考えてみたいと思います。

まず、検討すべきこととして、重大な経歴等の詐称に該当するか、ですが・・・タクシーの運転やトラックの運転などに従事して、ほかに配置転換が出来ない場合は、懲戒解雇の事由に該当する可能性が高いと考えられます。この場合は、就業規則や人事上の罰則規定などで懲戒解雇があることと懲戒解雇の事由について定める必要があります。また、配置転換ができないという「判断」も事業主の主観でなく、客観的なものが求められるので注意が必要になります。

車輌等の運転を業務としている場合、てんかんの発作は重大な事故につながる可能性が高いため、もし従業員から申告を受けていた場合で、同じ業務に使用し続けていて事故が起こった場合、被害者に対して使用者責任があり、損害額を弁済する必要が出てきます。会社が知らなかった場合でも、会社名義の車を使用していた場合は、同様に使用者責任が生じると考えられます。ほかに類似する事例として、事務に従事する従業員が銀行に行くために社用車を使用していた場合などは、社用車の使用についての会社の指示の有無にかかわらず、使用者責任がでてくるものと考えられます。

また、配置転換を行なう場合で賃金を減額しなければいけない場合などは、直ちに労働法違反となるものではなく、その会社の賃金制度や会社がおかれている状況などで判断される事になります。

いずれにせよ、就業規則の有無・規定内容の確認・勤務体制の確認は最低限行なっておいた方が良いものです。