2011年 2月の記事一覧

«Prev1Next»
11年02月25日 08時50分11秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

奈良県(医師時間外手当)事件(大阪高裁 H22.11.16判決)
(労働経済判例速報 通算2093号)


2回目は「住宅手当は割増賃金の算定基礎額に含まれるのか?」ということです。

「住宅手当は含めなくていんですよね!」

通常はそうですが、住宅手当が住宅に要する費用にかかわらず定額の場合は含めなければなりません(-_-メ

けっこう住宅手当を一律●万円としている会社も多いのですが、これを割増賃金の算定基礎額に含めている会社はまずありません。
住宅手当というだけで除外できると勘違いしているのです( ̄□ ̄;)

今回争点となった住宅手当(今回の名称は「住居手当」)は、持ち家の場合は定額、賃貸の場合はその費用に応じて変動するものでした。

これについて、裁判では次のように言って含めなくていいとしています。

「持ち家に居住する世帯主である職員に対する手当が定額であるとしても、住居手当自体が住宅に要する費用にかかわらず一律に定額で支給されているということはできない」

つまり、定額と変動が混在している場合は、定額とはみなされないので算定基礎額に含めなくていいということです(^_^)v

賃貸の場合の費用は家賃なので、その金額に応じて手当額を決めることはできますが、持ち家となるとその基準が難しいので定額とせざるを得ません。

そうすると、賃貸はともかく持ち家の手当は算定基礎額に含まれるのではとの疑問もあったわけですが、賃貸と持ち家を分ける必要はなく、一つの住宅手当として固定でなければいいということです。

これも会社にとっては有利な解釈になりましたo(^▽^)o

現在、賃貸も持ち家も一律定額にしている会社は、持ち家は定額にするにしても賃貸については家賃に応じて変動するように変えることをおすすめします。

以上
11年02月22日 09時34分07秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

奈良県(医師時間外手当)事件(大阪高裁 H22.11.16判決)
(労働経済判例速報 通算2093号)


この事件は、産婦人科の医師が次の請求をしたものです。
①宿日直は時間外労働だとして割増手当を請求
②休みの日の呼出に備えて自宅待機(宅直)する時間は休日労働だとして割増手当を請求


主な争点は、宿日直や宅直の時間が労働時間かどうかという点ですが、併せて割増賃金の算定基礎額についても争点になりました(-""-;)

前者よりもむしろ後者について興味深い判断がありましたので、ブログでは後者について2回シリーズで解説したいと思います(^-^)/

ちなみに、宿日直については労働密度が薄いとはいえないとして割増手当の請求を認め、一方、宅直については医師が自主的にしており(会社の命令はなかった)、負担も加重ではないとして割増手当の請求を棄却しました。

さて、1回目は「期末手当は割増賃金の算定基礎に含まれるのか?」ということです。
期末手当とは、公務員の賞与です。

「賞与なら含まれないでしょ!」

たしかにそうですが、賞与でもあらかじめ金額が決められているものは含めなければなりません(-_-メ

よく年俸制の場合に、年収を16等分して12を月給に4を夏冬の賞与になどとすることがありますが、この賞与は金額が確定しているので、算定基礎額に含めなければならないのです。

オーマイゴット\(゜□゜)/

これを知らないで、月給だけで割増計算している会社も多いようですが、残業代の未払いになってしまうので注意が必要です。

公務員の賞与には、期末手当と勤勉手当があり、期末手当は定額で勤勉手当は変動します。
そうすると、定額の期末手当は算定基礎額に含めなければならないような気がしますが、裁判では次のように言って含めなくていいとしています。

「その計算には在職期間の割合が考慮され、停職、休職等がある場合には、その期間は在職期間から控除されることが認められるから、支給額が一律に確定しているということはできない」

個人的には定額か変動かの判断は、本人の業績によるものであり勤務状況によるものではないと思うのですが、裁判所は勤務状況により変動すれば定額ではないとしています。

個人的な考えはともかく、これは会社にとっては都合のいい解釈です( ̄▽+ ̄*)

たとえば、先の年俸制の会社でも、賞与は4か月分としながらも、停職、休職の他、欠勤・遅刻・早退、産前産後休業、育児・介護休業などで減額するとしていれば、これは固定ではないということになります(^_^)v

こういうことでの減額は普通に行われているので、就業規則や給与規程にきちんと定めておけば、算定基礎に含めない理由として主張できるものと思われますo(^▽^)o

(次回につづく)
11年02月18日 08時45分57秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

【ポイント③】
○給料を約半分にまで下げるのは公序良俗に反し無効ではないか?

裁判所は、次のように言って公序良俗に反するとは言えないとしています。
「高年齢雇用継続給付金は、労働者の60歳到達時の賃金月額の61%となることまでも具体的に細かく予測をした上で支給金の割合を決定しており、少なくとも同一企業内において賃金額自体を比較した場合には、制度上織り込み済みというべきものである」

さらに
「定年前と比較すると、労働条件の変更はないとする企業が圧倒的に多数であるにもかかわらず、60歳を超えてからの賃金額は、定年前の50%から70%の間に73.8%が集中しており、そのうち60%から69%の間とする企業が最も多く集中している

要するに、制度上少なくとも4割減までは認めているし、世間一般でも半額とすることが特別下げすぎということもできないというわけです(^-^)

この判断で半額まではOKと言い切るわけにはいきませんが、認められないこともないということではあります。
ただ、リスクはあるので制度上認められていると考えられる4割減くらいまでが妥当ではないでしょうか(^_^)

なお、高年齢雇用継続給付金とは、再雇用で定年前と比べ給料が下がった場合に、その減額分を補填するために雇用保険から社員に対し給付金が支給されるものです。

【まとめ】
訴えを起こした社員と会社の間では、この労働条件の記載された書面に署名捺印しているので、給料を下げたことに合意が成立しています。
継続雇用が義務づけられる前にも、会社の判断で再雇用した社員がいたわけですが、こちらも同様(むしろもっと低い)労働条件で契約しており、特別この社員だけ悪い労働条件としているわけではありません(-""-;)
後になって、法改正を拡大解釈して訴えを起こすこと自体に無理があると思います
((o(-゛-;)パンチ☆

ただ、このような会社からすると理不尽と思えるような訴えもこれからは増えてくると思います( ̄□ ̄;)!!
会社としては法律をクリアすることはもちろんですが、証拠として提出できるよう、またトラブルを予防するという意味でも、労働条件は書面でしっかり締結しておくことをお勧めします!

以上
11年02月15日 08時50分13秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

前回まで4回にわたり高年齢者の継続雇用制度についてご説明しました。
中でも4回目は重要で、給料の下げ方によっては今回のようにもめる可能性があります(-_-メ

今回から2回シリーズで、X運輸事件を取り上げ、もう少し詳しく見てきたいと思います。

この事件は、定年後再雇用された社員が、「給料を半分近くにしてしまうような給料の引き下げは無効!」として差額を請求したものですヽ(`Д´)ノ

これに対し裁判所は、地方裁判所で棄却、さらに高等裁判所でも棄却され、会社側の全面勝訴となりましv(^-^)v

【ポイント①】
○継続雇用において給料を下げることはできるのか?

裁判所は、次のように言って給料を下げることを認めています。
「高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保について、その目的に反しない限り、各事業主の実情に応じた労使の工夫による柔軟な措置を許容する趣旨である」

この法律は65歳まで継続雇用することのみを求めており、継続雇用する場合の労働条件には言及していません。
これについては前回お話ししたとおりです(^~^)

【ポイント②】
○仕事の内容は変わらないのに給料を下げるのは「同一労働同一賃金の原則」や「均等待遇の原則」に反し許されないのでははないか?

これもまた裁判所は、次のように言って給料を下げることを認めています。
「正社員と再雇用の嘱託社員とは労働契約の種類・内容が異なり、異なる賃金体系に基づくものであるから、正社員と再雇用の嘱託社員の間との間には、本来的には、同一労働同一賃金の原則や均等待遇の原則の適用は予定されていない

さらに
「同一労働同一賃金の原則といっても、同原則が労働関係を規律する一般的な法規範として存在していると認めることはできないし、『公の秩序』としてこの原則が存在していると認めることも困難である

まず、正社員と再雇用の嘱託社員では会社としての取扱いが異なるので、単純に比較することはできない。
そして、そもそも我が国においては、同一労働同一賃金の原則という概念は確立していないとして、主張の前提条件を欠いているとしています。

つまり、見た目は仕事内容が同じでも、給料に差を付けることが直ちに違反となるわけではないということです。

必ず給料を下げることに反発する社員はいるもので、そのときこの判断は有効な説得材料になります(^_^)v

(次回につづく)
11年02月08日 08時57分15秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

さて、65歳まで雇用しろと言っていますが、これは定年の引き上げを言っているのでしょうか?

実はそうではありません。

もちろん定年の引き上げでもかまいませんが、やり方は3パターンあります(^-^)
①定年の引き上げ
②定年制の廃止
③継続雇用制度


①はシンプルですが、労働条件をそのままに継続雇用することになり、また退職金制度がある会社では勤続年数が伸びてしまうという問題もあります(-""-;)
管理職をそのまま役付とするのかなども考えなければなりません(-_-メ
いままでの雇用管理システムを再検討することにもなり、あまりこれを選択する会社はありません。

②は前回ご説明したように、本人からの申し出がないかぎり辞めてもらうことはできなくなるので、これを選択する会社はまずありません。

ということで、ほとんどの会社は③を選択します(^~^)

継続雇用制度とは、通常は再雇用のことをいいます。
定年で一旦退職させ、その後嘱託社員として改めて雇用するのです。
(大企業のように子会社があるようなところは子会社に転籍させることもできますが、中小企業ではありえないので再雇用で話を進めます)

再雇用ということは、改めて労働条件を設定し直すということです。
したがって、次のようにすることもできます。
(例)○雇用期間の定めなし→1年単位の期間雇用
                    (65歳まで更新あり)
   ○フルタイム→パートタイム
   ○基本給30万円→20万円
   ○月給制→時給制

なんかすごく社員にとって不利益なことをしているようような気がしますね(`Δ´)
でも、そもそも定年後は雇用する義務はなかったわけですから、利益にはなっても不利益になることはありません!

ただ、仕事はまったく変わらないのに給料を半分にしていいのかというと、これは微妙です。
明確に禁止されているわけではありませんが、裁判になった場合はなんとも言えません。
ケースバイケースでしょう( ̄^ ̄)

給料を下げるのであれば、定年前とは何かしら違いを設けておいた方が無難です。
物理的な業務内容もそうですし、責任の重さも重要な要素になります。
将来のリスクを未然に防ぐためにも、ぜひ検討したいところです。

ちなみに、
年次有給休暇だけはゼロからのスタートというわけにはいきません( ̄□ ̄;)
労働条件は変わったとしても、同じ会社に継続して雇用されています。
なので、勤続年数は通算され、休暇日数は引き継がれることになります。

以上
11年02月04日 07時15分34秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

65歳まで継続雇用の義務があるのはわかっていただけたと思いますが、無条件に全員を継続雇用しなければならないのでしょうか?

原則は全員ですが、必ずしも無条件ということではなく、合理的な条件を設けることができます(^-^)

具体的には次のようなものが示されています。
①意欲、能力等をできるかぎり具体的に測るものであること(具体性)
②必要とされる能力等を客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観性)

(例)
○社内技能検定レベルAレベル
○営業経験が豊富な者(全国の営業所を3か所以上経験)
○過去3年間の勤務評定がC(平均)以上の者(勤務評定が開示されている企業の場合)

当たり前ですが、法令や公序良俗に反するものはダメです。(-_-メ
(例)
○会社が必要と認めた者に限る
(基準がないことと等しく、これのみでは本改正の趣旨に反するおそれがある)
○上司の推薦がある者に限る
(基準がないことと等しく、これのみでは本改正の趣旨に反するおそれがある)
○男性(女性)に限る(男女差別に該当)
○組合活動に従事していない者(不当労働行為に該当)

実務では、「具体性」と「客観性」を勘案しながら、自社に会った条件を検討することになりますが、会社が勝手に決めることはできません。
労使で話し合って、労使協定によって定めることになっています。

ただし、300人以下の中小企業については、労使の協議が整わない場合にかぎって就業規則に定めてもいいということになっています。

ただ、これも今年の平成23年3月31日までの暫定措置なので、現在就業規則に定めている会社は、4月1日以降について労使協定を締結しなければなりません(-""-;)
そうしないと、選定条件は期限切れで無効だとか言われて、本来継続雇用しなくていい社員から訴えられる可能性があります。

オーマイゴット\(゜□゜)/

つまらないトラブルにならないよう、きちんと対応しておきましょう!

ちなみに、この労使協定は労働基準監督署への届出する必要はありません。

(次回につづく)
11年02月01日 08時02分52秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

ところが、いまは単純に会社次第というわけにはいかなくなりました( ̄□ ̄;)
高年齢者雇用安定法が改正され、段階的に65歳までの雇用を会社に義務づけたのです。
これにより現在では、64歳までの雇用が義務づけられています!

ちなみに、アメリカでは定年を設けることは法律で禁止されています!
男女差別と同じように年齢差別も禁止です。
ただこれは、最初からそうだったわけではなく、定年年齢を徐々に引き上げ、最終的に廃止したという経過をたどっています。

また、ヨーロッパ諸国の定年年齢は60~65歳です。
年金支給年齢との関係でさらに引き上げを検討している国もあります。

実は、日本が65歳までの継続雇用を打ち出したのも、年金の支給年齢を段階的に遅らせることに対応した措置です。

「年金が支給されるまでは会社で面倒見てくれ!」というわけです(-""-;)

では具体的に見ていきましょう。

65歳まで雇用を義務づけるといっても、いきなり65歳にするのではなく、次のように段階的に引き上げることになっています。

○平成18年4月1日~平成19年3月31日・・・62歳まで
○平成19年4月1日~平成22年3月31日・・・62歳まで
○平成22年4月1日~平成25年3月31日・・・64歳まで
○平成25年4月1日以降・・・・・・・・・・・・・・・65歳まで


したがって、現在は64歳までの雇用が義務づけられているということになります。

でも注意してほしいことがあります。
それは、いま定年を迎える社員は64歳まで雇用すればいいかというとそうではありません。

実は、65歳まで雇用しなければなりません!

オーマイゴット\(゜□゜)/

なぜかというと・・・。

たとえば今年60歳定年を迎える社員は64歳までの雇用は保障されています。
これはいいですよね。

でも、この社員が64歳を迎えるころには平成25年4月1日を超えているので、その時点では65歳まで雇用しなければなりません。

つまり、最初は64歳での継続雇用だったものが、その継続雇用期間中に65歳伸びるというわけです。

なので、結論としては、これから定年を迎える社員は全員65歳まで雇用しなければならないということになるのです(-_-メ

これって多くの人が勘違いしている人がいるので(→o←)ゞ・・・よく覚えておきましょうね!

(次回につづく)
«Prev1Next»