2010年 12月の記事一覧

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10年12月27日 10時27分03秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

会社に負担を強いるのであれば、国は国としてすべきことがあるはずです!

「消費税を上げる前にムダを削減すべき」といいます。
同じように、会社に負担を強いる前に待機児童の問題を解決すべきではないでしょうか。
休業したら補助があるとはいえ収入は半減してしまいます。
できれば休業しないで働きたいと思っても、保育所に空きがないからやむを得ず休業していると社員も多いのです(TωT)

また、どうのような趣旨で作られたのかと訊かれれば、明確に答えられなければなりません!!

たとえば、今回の改正で母親と父親が一緒に休むことができるようになりましたが、こうすることにどのような意味や目的があるのか?
母親に対する配慮はわかる。
父親が休業することも否定はしない。
でも、母親と父親の両方が休業する必要性はどこになるのでしょうか?
別に否定するわけではないけれど、納得できない人も多いはずです。
実際、すべての社長が「なぜ?」と言っていました(-_-メ

今までは、母親が休業したり専業主婦など育児をできるような場合は、父親は休業することができませんでした。
それをできるようにしたのですから、当然理由があるはずです。
でも、その理由はどこにも書かれていません。

この項目に限らず、改正するからにはそれなりの理由があるはずです。
そういうことは一切説明せずに、「こう変わりました」という結果だけを一方的に会社に通知して負担を強いる。
こんなやりかたは、とても誠実とはいえないでしょう゛(`ヘ´#)

パンフレットには、法改正全体の趣旨として
「仕事と家庭の両立しやすい職場づくりは、企業にとっても優秀な人材の確保・育成・定着につながるなどのメリットがある」
としています。

たしかに、それはそうかもしれませんが、でもこれは企業自身の考えとしてするものであり、法律で強制的にさせるべきものではありません!
結果的にこのような効果もあるというだけで、法改正の目的とはまったく関係のない話です。
単なる反発をやわらげるための方便でしかありません(-""-;)

仕事を休んででも子育てをしたいと思う父親はいます。
別にこれを否定するつもりはないし、私自身可能であればそうしたいとも思います。
ただ、これは単なる願望であり、そうしなければ仕事と育児を両立できないというものではありません。
日本の歴史上、両親2人で仕事をしないで育児に専念したなんてことはなかったわけですから、いまそうしなければならない理由はないはずです。

何度も言いますが、別に否定しているわけではありません。
いい悪いの問題ではなく、「説明責任を果たしましょう」と言っているだけです。
「やれ」と言えば従うだろうという態度は、国民をバカにしていますヾ(。`Д´。)ノ
わかりやすく納得性の高い法律作りを望みます。
10年12月24日 07時42分47秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

この法律って、作った当事者でしかわからないんじゃないでしょうか(-_-メ
県の労働局レベルでは法律の趣旨を理解できているかどうか疑問です。
たとえば、育児休業が1歳までから1歳2か月までなったわけですが、この1歳2か月の根拠は何かと県の担当者に訊いてもわからないわけです┐( ̄ヘ ̄)┌

この法律は会社にかなりの負担を強いています。
「育児と仕事の両立はたいへんだから、育児中の社員に配慮しなさい」と言うのは簡単ですが、やる方はたいへんです。
実際、数名しかいないような職場で1年間も休業されたら、どれだけたいへんか想像がつくでしょう゛(`ヘ´#)

そこにきて今回の改正では、さらにたくさんのメニューが付け加えられました。
顧問企業の社長さんに改正内容の説明をして回りましたが、極めて評判が悪かったですね。
正直、途中で説明するのがいやになりましたよ(^_^;)

社長さんは何を怒っているのか!?
それは、「国はなんでもかんでも負担を会社に押しつけようとしていること」です。

厚生労働省のパンフレットには次のように書かれています。
我が国においては少子化が進行しており、社会経済に深刻な影響を与えている。
一方で、子どもを生み育て、家庭生活を豊かに過ごしたいと願う人々は多いにもかかわらず、こうした希望が実現しにくい状況がみられる。
持続可能で安心できる社会を作るためには「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」が必要。
これは、企業や社会全体の明日への投資であり、活力の維持につながる。


言っていることは正論だしそのとおりだと思いますが、では国は何をしているのでしょうか。
こんな状況になったのは会社のせいですか?
「明日への投資」なんて簡単に言うけれど、強制的に投資させられる会社はたまったものじゃありません(`Δ´)

ある社長に言われました
「社員を休ませる前に保育所を整備して、働きながら子育てできる環境を整える方が先だろう!」
待機児童の対策が一向に進まない現状からすると、ごもっともなご意見です( ̄* ̄ )

別に私も社長もこの法律やワーク・ライフ・バランスを否定するつもりはないんです。
ただ、「それ相応の根拠や説明、そして国としてやるべきことがあるんじゃないですか!」と言いたいわけですヽ(`Д´)ノ

(次回につづく)
10年12月22日 08時35分23秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

育児介護休業の制度自体が難解になった理由は3つあります。

一つ目は、メニューが多すぎること。
「育児休業」、「介護休業」、「介護休暇」、「看護休暇」、この似たような名称を区別するだけでもたいへんなのに、そこに「時間外労働の制限」、「所定外労働の免除」、「深夜労働の免除」が加わります。
しかも、それぞれに条件と例外があるというのですから、もはや理解の限界を超えていますヽ((◎д◎ ))ゝ

二つ目は、労働法特有の専門的な考え方が入ってきていること。
たとえば、「時間外労働」と「所定外労働」はどう違うのかわかりますか?
専門家は当然わかりますが、普通はこの違いわかりませんよね。
時間外労働とは、法律で認められた労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える労働のこと。
所定外労働とは、労働契約で定められた労働時間を超える労働のこと。

こう書いても、わかったようなわからないようなでしょうね┐( ̄ヘ ̄)┌
要するに、時間外労働は所定外労働の一部だといえます。
1日8時間の会社であれば、時間外労働も所定外労働も同じですが、1日7時間の会社の場合は、7時間を超えれば所定外労働となりますが、8時間を超えないと時間外労働にはなりません。
つまり、7時間を超えれば所定外労働になり、さらに8時間を超えると時間外労働となるのです。

三つ目は、条件が技術的で難解なこと。
たとえば今回の改正で、1歳2か月まで育児休業をとることができるようになりましたが、次のような条件があります。
(1) 配偶者が、子の1歳に達する日までの間に1日以上育児休業を取得すること
(2) 社員は、配偶者と同時または配偶者より後に育児休業を開始すること
(3) 社員は、子の1歳の誕生日までに育児休業を開始すること

どうですか。わかりましたか?
これでもわかりやすく書いているんですよ。
法律はこの10倍くらい難解です(-_-メ

ちなみに、1歳2か月までとはいっていますが、休業期間は1年間が限度です。
つまり、1歳2か月までの間に1年間の休業をとれるということです。
母親の場合は産後休業も含めて1年間なので、事実上1歳までしか休業できません。
社員からすると盲点ですね(  ̄っ ̄)

それともうひとつ。
原則として、育児休業から復帰した場合は、同じ子供については改めて休業(2回目)することはできません。
しかし、今回の改正で父親が、「次の期間」に休業した場合にかぎっては2回目の休業もできるようになりました。
(1) 出産予定日に出産した場合・・・・・・・出産日から出産日後8週間までの期間
(2) 出産予定日より出産が早まった場合・・・出産日から出産予定日後8週間までの期間
(3) 出産予定日より出産が遅れた場合・・・・出産予定日から出産日後8週間までの期間

これもよくわからないですよね。
でもこれもわかりやすく書いているんですよ。
法律はこの20倍くらい難解です(-""-;)

そもそも、産後休業を知らなければ意味が通じません。
産後休業とは、原則として出産後8週間は労働させてはならないと法律で決められている期間のことです。
以前より、この期間については父親も育児休業をとることができましたが、これを過ぎると職場復帰しなければなりませんでした。
そして、2回目の休業はできないので、保育所に預けるか他に子供を面倒見てくる人がいないかぎり、母親は職場復帰できなかったのです。

これが改正で父親は2回目も休業できることになったので、母親が職場復帰する代わりに父親が休業することもできるようになったわけです。

ここまで説明すれば、なんとなくわかっていただけるかもしれませんが、そうでなければさっぱりわかりません。

これでは会社も社員も困ります(`ε´)
会社は運用しようにもどうのようにしたらいいのかわかりません

育児・介護の制度は無制限に認められるわけではないので、条件と例外が重要です。
でも、まったく理解できません( ̄□ ̄;)

社員も利用しようにも何をどう利用したらいいのかわかならないし、どこまで利用できるのかもわかりません。
育児と仕事を両立しようと思っても計画の立てようがありません。

いったいどういうつもりでこの法律を作っているんでしょうかね((o(-゛-;)

(次回につづく)
10年12月20日 09時12分00秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

今回からは育児介護休業法について、4回シリーズで考えてみたいと思います。

先日、弁護士の八代徹也先生のセミナーに参加しました。
この中で
「昭和後期頃から労働法が技術的になり難解になっている」
というお話がありました(-""-;)

これは私も日頃から実感していまして、特に顕著なのが「育児介護休業法」です。

今年6月30日に法改正がありましたので、育児介護休業規程の改定作業をしたのですが、はっきり言って文章で正確に制度を理解さるのは無理!

それでも、できるだけわかりやすく表現しましたが、一般社員にどこまで理解してもらえるのか少々不安があります(´д`lll)

育児介護休業法は平成4年4月1日からスタートしました。
当時は育児休業だけで、子供が1歳になるまでは育児休業することができるというシンプルなものでした。
平成11年4月1日からは3か月間の介護休業も義務づけられましたが、これくらいであれば制度として難しいことはありません。

ところがこれに様々のことが追加されました。
○短時間勤務など休業以外も認めること
○時間外労働を制限すること
○深夜労働はさせないこと
○看護休暇を認めること(年間5日)


そして今回の改正で
○短時間勤務を義務とすること(100人の会社は2年間猶予)
○所定外労働を免除すること(100人の会社は2年間猶予)
○介護休暇を認めること(100人の会社は2年間猶予)
○父親の育児休業をとりやすくすること
○看護休暇を拡充すること(子供2人以上は年間10日)


育児介護休業法には、条件や例外、運用方法までこと細かく規定されています。
ほとんど運用マニュアルといっていい。
でも、法律の条文は難解で何を言っているのかわからないので、それをわかりやすく育児介護休業規程に落とし込むわけです(^_^;)

実は、今回の改正以前はそれでよかったのですが、今回はそれだけでは済まなくなりました。
というのも、制度自体が難しくて理解できなくなってしまったからです( ̄□ ̄;)!!

(次回につづく)
10年12月17日 08時49分30秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


【判決】
①未払い残業代として約386万円の支払い
②付加金として約267万円の支払い
③年14.6%の遅延利息の支払い(約100万円)

【争点】
①管理監督者に該当するか
→該当しない
②業務命令はあったか
→黙示の業務命令に基づき行われていた
③みなし残業手当になるか
→役職手当などを時間外・休日手当の代わりとする証拠はない
④割増単価は正しいか
→住宅手当も家族手当も割増単価の基礎から除外することはできない


今回はシリーズの最終回です。

最後に、もし③と④が認められたら、どれくらい支払額が減るのか試算してみたいと思います。
もちろん、当事者ではないので正確に計算することはできませんが、だいたいの金額で見ていただければと思います。

裁判ではすべての手当を含めて割増単価の基礎としましたので、基礎額は約36万円で計算されました(-_-メ
一方、③④が認められたと仮定すると、逆にすべての手当を除外することができ、基礎額は約25万円で計算することができますo(^-^)o

そうすると、未払い残業代は約268万円、付加金は185万円、遅延利息は69万円の合計522万円となります。

その差231万円ですo(^▽^)o

さらに、③が認められると、役職手当等の7万7500円は既に割増手当として支払っていたことになるので、これの2年分を未払い残業代から控除することができます。
そうすると、未払い残業代は82万円、付加金は57万円、遅延利息は21万円の合計160万円となりますо(ж>▽<)y ☆

なんと、753万円の支払いが160万円の支払いで済んでしまうのです
:*:・( ̄∀ ̄)・:*:


信じられないかもしれませんが、これは真実です。
数字のマジックではありません。

給与規程に各手当をきちんと規定しておけば、約600万円も節約できたのです。
というより、きちんと規定していなかったために約600万円も多く支払わされることになったと言った方がいいでしょう(-""-;)

もちろん、これには専門的な知識が必要ですが、もはや知らないでは済まされない時代になっているのです。
これだけの差が出るのですから、無視はできないでしょう。

たいていの社長は営業やマーケティングといった攻めにばかり気を取られて、労務管理のような守りを疎かにしています。
今まではそれでもよかったのかもしれませんが、これからは守りも充実させていかないといけないと思います。

いくら得点しても、失点の方が多ければ負けてしまいますからね(^_^;)
10年12月15日 14時21分15秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


【判決】
①未払い残業代として約386万円の支払い
②付加金として約267万円の支払い
③年14.6%の遅延利息の支払い(約100万円)

【争点】
①管理監督者に該当するか
→該当しない
②業務命令はあったか
→黙示の業務命令に基づき行われていた
③みなし残業手当になるか
→役職手当などを時間外・休日手当の代わりとする証拠はない
④割増単価は正しいか
→住宅手当も家族手当も割増単価の基礎から除外することはできない


最後は、不必要に割増単価を上げないように注意することです。

割増単価の基礎から除外できるのは、法律で次のものだけに限定されています。
○家族手当
○通勤手当
○別居手当
○子女教育手当
○住宅手当
○臨時に支払われた賃金
○1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

それぞれ、名称にかかわりなく実態で見るので、今回のケースのように家族や住宅と関連性がないと判断されると除外できなくなってしまいます(-_-メ

関連性があるとしても、次のような場合は除外が認められません。
○家族手当
・・・家族に関係なく一律に支給される場合
・・・家族に応じた額ではなく基本給に応じた額である場合
○住宅手当
・・・住宅に要する費用にかかわらず一律に定額で支給される場合

要するに、社員の個人的な事情により金額が変動するような手当でなければ、除外することはできないということです。

また、社員全員について同じ条件でなければ、除外は難しいと思います。
特定の社員にだけ家族手当や住宅手当と称して支給した場合は、その社員の労働に対する特別な報酬とみなさてしまうでしょう(-""-;)

たとえば、優秀な社員を採用したいとき。
月給40万円出せばうちの会社に来てくれるかもしれない。
でも、これだと残業代が高く付いてしまう。
よし、月給40万円を「月給30万円+家族手当5万円+住宅手当5万円」に分割しよう。
そうすれば、実際には月給40万円でも残業代は月給30万円の計算に抑えることができる。

なんて考えても、これは認められませんよということです(^_^;)

(次回につづく)
10年12月13日 08時49分28秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


【判決】
①未払い残業代として約386万円の支払い
②付加金として約267万円の支払い
③年14.6%の遅延利息の支払い(約100万円)

【争点】
①管理監督者に該当するか
→該当しない
②業務命令はあったか
→黙示の業務命令に基づき行われていた
③みなし残業手当になるか
→役職手当などを時間外・休日手当の代わりとする証拠はない
④割増単価は正しいか
→住宅手当も家族手当も割増単価の基礎から除外することはできない


管理監督者として認められない、業務命令もあったとなると、次は③各種手当がみなし残業手当として認められるかどうかが争点になります。

これが認められるためには、時間外・休日手当の代わりとして支払っていることが明確になっていなければなりません。
一般的には就業規則、それがなければ雇用契約書で規定することになります(^-^)

今回のケースでいえば、役職手当1万5000円、特別手当4万円、職能給2万2500円が時間外・休日手当の代わりと規定しておく必要があります。

たとえば、これらを役職手当に集約して7万7500円とし、
「役職手当は、時間外労働および休日労働に対する割増手当として支払うものとする」
と規定するのです。
こうしておけば、時間外・休日手当の代わりであることが明確になります(^_^)v

みなし残業手当が認められると、2つの点でいいことがあります。

一つは、実際の時間外・休日手当がみなし残業手当を超えない限り、未払い残業代は発生しないことですo(^-^)o
もう一つは、みなし残業手当分を割増単価の基礎から除外できることですo(^▽^)o
つまり、割増単価を低くすることで割増手当を抑えることができ、しかも抑えた割増手当からみなし残業手当を除くことができるので、ほとんど未払いはなくなるのです
:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

管理職に昇格して割増手当が付かなくなるということは、役職手当には昇格前の割増手当分を含んでいると考えるのが普通です。
でも、そのように明確に規定されていなければ証明にはなりません。
いくら社長はそのように思っていてもダメなんです。
仮に、社員にはそのように説明していたとしても、「そんなことは聴いていない」と言われてしまえばそれまでです。
大事なことは必ず書面にしておきましょう。

(次回につづく)
10年12月10日 10時01分17秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


【判決】
①未払い残業代として約386万円の支払い
②付加金として約267万円の支払い
③年14.6%の遅延利息の支払い(約100万円)

【争点】
①管理監督者に該当するか
→該当しない
②業務命令はあったか
→黙示の業務命令に基づき行われていた
③みなし残業手当になるか
→役職手当などを時間外・休日手当の代わりとする証拠はない
④割増単価は正しいか
→住宅手当も家族手当も割増単価の基礎から除外することはできない


管理監督者として認められなかったとすると、次は②業務命令があったのかどうが争点になります。
残業のほとんどは社員の判断でしており、会社が業務命令を出すことはあまりありません。
しかし、社員の判断だからといって、それを社員が勝手にしたという理屈は通りません(-_-メ
残業を黙認していたとして、黙示の業務命令があったとなってしまいます。

オーマイゴット\(゜□゜)/

業務命令がなかったとするためには、明確に残業を禁止する必要があります。
そこで有効なのが「残業の許可制」です(^_^)v

残業をする場合は、必ず事前に上司の許可を受けるようにするのです。
もし、許可を受けないで残業をしたとすれば、それは業務命令ではないということになります((>д<))
許可していない以上当然ですよね。

それに、これは意外な効果を生み出します。
今までは「残業すればいいや」と思って仕事をした社員も、これからはそうはいかなくなります。
残業の理由によっては、単なるできない社員と見られてしまいますからね。
いわゆるダラダラ残業を防止できるのです。

また、残業の理由を把握することで、業務量の調整や効率化の工夫など会社としての対策もとれるようになりますv(^-^)v
こうすることで、会社全体の生産性アップも期待できるのです:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

ただ、今回のケースのように、管理監督者のつもりで割増手当を支払っていなかったというような場合は、許可制としても許可をする方なのでリスクを回避できません。
このようなときは、健康管理を理由に一定時間以上の残業を禁止するしかないでしょうね(^_^;)
たとえば、残業については月50時間、休日労働については月2日を超える場合は、事前に会社に報告し許可を受けることにするのです。

詳しくは次回ご説明しますが、みなし残業手当として月30時間、休日労働1日分を支払っていれば、もし訴えたれたとしても、最高で差額の月20時間分の残業、1日分の休日労働で済むわけです。

(次回につづく)
10年12月08日 06時37分18秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


今までこの事件について解説していましたが、まとめると次のようになります。

【判決】
①未払い残業代として約386万円の支払い
②付加金として約267万円の支払い
③年14.6%の遅延利息の支払い(約100万円)

【争点】
①管理監督者に該当するか
→該当しない
②業務命令はあったか
→黙示の業務命令に基づき行われていた
③みなし残業手当になるか
→役職手当などを時間外・休日手当の代わりとする証拠はない
④割増単価は正しいか
→住宅手当も家族手当も割増単価の基礎から除外することはできない


争点はことごとく否定されました。
①の未払い残業代請求額は484万円だったので、それよりは少なくなっていますが、ほぼ全面敗訴といっていいでしょう(((゜д゜;)))
社員7名の会社には厳しすぎる結果だと思います。

オーマイゴット\(゜□゜)/

今回からは、これを反面教師として、どのようにすればよかったのかを考えてみます。

まずは①管理監督者に該当するか。
管理監督者であれば、②~④は検討するまでもなく割増手当の必要はありません。
管理監督者と認められるかどうかは極めて重要です。
ただ、管理監督者にはどれだけ働かせても割増手当は必要ないということから、認められるためには、いくつかの高いハードルを超えなければなりません(-_-メ

まずは、実際に管理監督をしていたかどうかです。
この会社は社員7名であるにもかかわらず、部署が5つもあります。
詳細は不明ですが、おそらく5部署それぞれに1名ずつ管理職がいたものと思われます。
当然、部下がいない人もいたわけで、これで管理監督者といえるはずがありません(-""-;)
この状況で管理監督者とするためには、この中から1名、多くても2名だけを管理職として扱うべきです。
そして、部下の人事考課をさせ、新たに社員を採用する場合は一緒に立ち会わせるなどのことも必要でしょう。
管理監督者というからには、管理監督をしていなければならないのです(^-^)

また、そもそも管理監督者に割増手当が必要ないという理由は、管理監督者については労働時間の管理をしないからです。
つまり、労働時間という概念がないので、当然時間外・休日労働という概念もありません。
したがって、割増手当はありえないということになります。

そうすると、タイムカードなどで勤務時間を管理しているとなると管理監督者とはいえなくなります。
ただ、タイムカードを打刻させること自体はかまいません。
管理監督者といえでも社員なので、健康管理の面から働き過ぎなどのないようチェックする必要があるからです。

ここでいう勤務時間の管理とは、出退勤を管理することのことです。
遅刻・早退・欠勤について減額していたりすると、まず間違いなく認められません。
今回のケースでは、直行直帰について申請書を提出させていてことも、勤務時間の管理をしているとされました(→o←)ゞ

それから、給与はそれ相応の金額を支払う必要があります。
特に、割増手当が付く部下よりも給与総額が少ないようでは、まず認められません。
昇格したのに収入が減るのでは理屈に合いませんからね(`×´)
(現実にはこういうことも多いようですが)

管理職には役職手当のようなものが付くと思いますが、この手当の額が問題です。
少なくとも、割増手当よりは多くないといけません。
そうでないと収入が減ってしまいますからね。
ひとつの目安としてはこんな感じでしょうか。
主任1万円→係長2万円→課長5万円→部長8万円
ちなみに、少なくとも課長以上でないと管理監督者とは認められないと思ってください。

最後に、できれば経営会議のようなものに参加させられるとベストでしょう。
社員ではありますが、経営者側の人間といった扱いがあるとグンと認められやすくなります(^_^)v

(次回につづく)
10年12月06日 09時53分40秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


④割増単価は正しいか
 →住宅手当も家族手当も割増単価の基礎から除外することはできない


これだけは、この事件特有の事案ですね。

よくあるのは、本来は割増単価の基礎に含めなければならない手当を含めず、基本給だけで割増単価を算出しているというケース。
もちろん、未払い残業代を計算するときは、これらの手当を含めて計算させられるので、思ったより金額が多くなったなんてことになります(-_-メ

しかし、法律で住宅手当や家族手当は割増単価から除外できることになっているので、これを含めなさいということは本来あり得ません。

では、なぜ除外が認められなかったのでしょうか?
実は、住宅手当や家族手当といいながら、実態は住宅とも家族とも関係がないと判断されてしまったのです。

オーマイゴット\(゜□゜)/

住宅手当や家族手当を割増単価の基礎から除外していいという趣旨は、これらが労働とは関係のない手当だからです。

大事なのは名称ではなく中身。
労働とは関係ないということが証明されなければならないのです(-""-;)

たとえば、住宅手当であれば家賃の金額に応じて手当額が決まるとか、家族手当であれば家族の続柄や人数に応じて手当額が決まるというようなものでなくてはなりません。
住宅や家族との因果関係がない限り、いくら名称が住宅手当や家族手当であっても除外することは認められないのです。

今回のケースはどうだったかというと、ちょっとイレギュラーな対応をしています。

当初、この社員の手当は住宅手当2万8000円、家族手当1万8000円、役職手当1万5000円、特別手当4万円、職務給2万2500円でした。
ところが、この社員は業績が芳しくない割に役職手当等が多すぎると他の社員から不満が出るようになりました。
かといって単純に下げるわけにもいきません。
仕方なく、役職手当、特別手当、職務給の分を住宅手当と家族手当に加算して、見かけ上役職手当等をなくしたようにしたのです。

これがまずかったY(>_<、)Y

こうなると明らかに住宅や家族との因果関係はありません。
因果関係がないのだから、割増単価の基礎から除外することはできない。
せめて、当初の住宅手当2万8000円、家族手当1万8000円分くらいは除外してくれてもよさそうですが、これらも含め全額について割増単価の基礎に含めなさいとなってしまったのです。

今回のケースは、やむを得ない事情もあり、少しかわいそうな気がします(´д`lll)
でも、こういうことってオーナー企業ではよくあることです。
社長が創業者だったりすると、たいてい明確なルールはなく社長自身がルールみたいなところがあります。
誰も文句を言えないので、勝手にその場かぎりの対応をしてしまうのです。

社長に悪気はなく、むしろ社員のためにしてあげたことなんでしょうが、結果として自分で自分の首を絞めることになってしまいました。

(次回につづく)
10年12月03日 10時28分06秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)

②業務命令はあったか
→黙示の業務命令に基づき行われていた


実際には、不動産事業部はこの社員に任せていたので、いちいち時間外や休日労働に業務命令を出していたわけではありません。
しかし、時間外や休日労働が必要なことは、少なくとも抽象的な形で認識していたとされ、明確に残業を禁止していたわけでもない。
もちろん明確に残業を認めていたわけではありませんが、知っていながら禁止もしてなかったということは黙示的に承認していた、簡単に言うと黙認していたということになります。

したがって、時間外や休日労働は黙示の業務命令に基づき行われていたとされました(>_<)

本来、時間外や休日労働は業務命令があって初めてなされるものですが、実際には社員の判断で行われています。
これを明確に禁止していない限り、業務命令があったとみなされてしまうので、「社員が勝手にしたことだ」という理屈はまず通りません。

未払い残業代請求では必ず争点になるので、よく覚えておきましょう!


③みなし残業手当になるか
→役職手当などを時間外・休日手当の代わりとする証拠はない


役職手当1万5000円、特別手当4万円、職能給2万2500円の合計7万7500円は時間外・休日手当の代わりと主張するが、就業規則や賃金規程にそのような記載はなく、そのような証拠はない。
仮に、社長がそのような認識で支払っていたとしても、だからといってそのような雇用契約の内容になるわけではない。

というわけで、みなし残業手当を裏付ける証拠はまったくなく認められませんでした(´д`lll)

これも、必ず会社が主張することですが、賃金規程や雇用契約書で明確に時間外・休日手当として支払う旨の記載がないと、まず間違いなく認められません。
本当にそのつもりで支払うのであれば、必ず書面に残しておかなければなりません。

(次回につづく)
10年12月01日 09時36分15秒
Posted by: wada
和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


未払い残業問題では、次のようなことがよく争点になります。
①管理監督者に該当するか
・・・・管理職だから時間外労働や休日労働は発生しない
②業務命令はあったか
・・・・社員が勝手に時間外労働や休日労働をした
③みなし残業手当になるか
・・・・役職手当等に割増手当分が含まれている
④割増単価は正しいか
・・・・家族手当や住宅手当は割増の基礎に含まれない
⑤みなし労働は適用になるか
・・・・営業は事業場外みなし労働が適用され時間外労働は発生しない

この事件は、①~④が争点になりましたが、ことごとく否定されてしまいました!

オーマイゴット\(゜□゜)/

①~③はよくあることなので仕方ないとしても、④についてはずさんなやり方が被害を拡大したといえます。
詳しくは後述しますが、オーナー企業にありがちな失敗なので、ポイントをよく押さえてください。

では、順番に解説していきますね。

①管理監督者に該当するか
  →該当しない


管理監督者に該当するかどうかのポイントは次のとおり。
○会社全体に占める管理職の割合は
○社員採用の権限があるか
○部下の人事考課をしているか
○出退勤の管理をされているか
○時間外手当を付けなくても相応の給料になっているか

会社は社員7名にもかかわらず5つの部署があり、ほとんどの部署に1名しかいない状態でした。
当然、管理職割合は高いです。
原告はそのうちの一つ、不動産事業部の責任者だったわけですが、このような状況で管理職といえるはずもなく、実際、採用の権限もなく人事考課もしていませんでした。

しかも、タイムカードで労働時間の管理をされており、直行直帰も申請書が必要。
給料は一番多かったのですが、それは管理職だからではなく業務の対価によるものでした。

結局、何ひとつ管理監督者としての要件を満たしておらず、全否定されてしまいましたヽ((◎д◎ ))ゝ

そもそもこの会社、管理職以外の社員にも割増手当を支払っておらず、全社員について割増手当を支払うつもりはなかったようです。

これが付加金命令の根拠のひとつにもされましたが、よほど社員との関係をよくしていないと、他の社員からも訴えられかねないですね。
今回前例をつくってしまいましたし・・・。

(次回につづく)
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