☆「お客様は神様です」

5月6日(日)に、たまたまNHKで「あの人に会いたい」という番組が
あって、故三波春夫さんが取り上げられていました。

この番組を見られた方もおられると思いますが、僅か、10分間の放送だった
のですが、自分にピッタリの内容だったのです。

と言うのは、ちょっとしたエピソードがあったので、その内容が心にグッと
迫ったのです。

そのエピソードのご紹介に入る前に状況からご紹介します。


私には84歳になる母がいるのですが、約1kmほど離れた所で別居していま
す。

父が一昨年の冬に亡くなって、現在、一人で暮らしています。

息子としては、母のことが気になるのですが、毎朝、電話での確認と土日に
会う位の事しかできないのです。

毎月、僅かですが仕送りとして持って行くのですが、その時は、丁度、その日
に当ったのです。

午前10時頃に出かけて、世間話をしていると11時頃になったので、お昼に
お好み焼きを食べようかとなって、近所の商店街まで買いに行ったのです。

11時過ぎというのに、この店はやっと開店準備が終ったという感じでした。

私は、モダン焼きを2枚頼んだのですが、すぐに、15分位かかるが良いかと
聞いてきたのです。

私は、時間がかかるのは仕方ないと思って、待つことにしました。

ところが、驚いたことに、この店は、ブタ玉などを焼いておいて即売する店
という事もあって「ブタ玉」を鉄板の隅からドンドンつくり始めたのです。

それも何十個という感じで、ドンドン伸ばすのです。

目の前に、客がいるというのに、「これはお客さんの分」という一言もなく
ヒタスラ同じ作業を繰り返すのです。

これでは、たまらんと思い、断って、別のものを買うことにしたのです。


最近、若い人の接客力に疑問をもっているのですが、確かに、店主からは
朝一番は、鉄板一面に「ブタ玉」を焼くという指示を受けているのでしょうが
、幾ら何でも「これから焼きますね」位の愛想や機転があっても良さそうに
思うのです。

本人は何が起こったのか理解していないと思うが、こんな調子で応対している
と、客はドンドン減少して行くと思うのです。

今時、「安い」だけでは客は満足しないのです。

特に、シニア層がドンドン増えてくるので、こういうお店もチャンスが増える
のに、シニア層の特性をつかんでおかねばならないのです。

コンビニもシニア層向けの店舗運営に向けて実験を始めています。

お客様との言葉のキャッチ・ボールをある程度、臨機応変に実施することが
重要なのですが、マニュアル文化の所為か、なかなか、出来ない人が多いの
では、シニア層に満足をあたえられないのです。

こんなエピソードがあったので、ピッタリの番組だったのです。


☆名セリフは「機転」から生まれた

三波春夫さんは、昭和14年、16才で南條文若という芸名で浪曲師デビュー
したのたですが、戦争でシベリア抑留という経験を経て、帰国後、昭和24年
再度、復帰したそうです。

あの透き通るような美声の浪曲で風靡したのですが、
ある時、客席から
「なにわ節を短くして、歌を長くして!」
という掛け声がかかったのだそうです。

これが転機になって、昭和32年に歌手に転向し、
スター街道と昇るのですが、
歌謡浪曲「俵星玄蕃」で頂点へ駆け上るのです。

あの赤穂浪士と絡まった歌詞で、曲間に入る、浪曲調の
雪をけ立てて、さっくさく、さっくさく・・
という当りは本当に「三波」さんしか出来ない芸と輝いていました。


ある時、講演のステージで、
司会の宮尾たか志さんが「三波さんにとって、お客様とは?」と問うた時に、
咄嗟に「お客様です」と答えたのですが、
宮尾たか志さんが間髪要れずに
「客席には、米をつくる神様、野菜をつくる神様が一杯!」
とフォローしたことでお客様が大喜びして、
「お客様は神様です」
というセリフが誕生したのだそうです。


偶然だったのですね。


宮尾さんが「お客様とは?」と問いかける、
「神様」と答える、
そして、
「米をつくる神様、野菜をつくる神様・・」と機転良くフォローしたから
生まれたのです。


凄いですね。


計算づくの「お客様は神様です」ではないのです。

三波さんの人柄が偲ばれます。


☆「一言」の重要性

先の「お好み焼き」の1件に戻りますが、なにも私が「神様」という心算は
ないのですが、モクモクと作業する中で機転の利いた「一言」があれば、
こういう事を書くことにはならなかったのです。

この「一言」が難しいのです。

あるいは、本人は言った心算なのかも知れないのです。


でも、「一言」が伝わらなかったのです。


営業や接客という世界では、対人接客力の低下が顕著になっています。

自分中心という傾向は、マニュアル文化でモノトーンな応対化しており、
「コーヒーになります」という手品師的なトークが生まれているのです。


何かおかしいのです。


目の前に、家族連れでいて、家族がそれぞれ注文した後、
席を取りに行っているのに
「お召し上がりですか?」
と聞くなどのおかしさがあります。


「ゴールデン・ルール」(汝欲する所を施せ)がありますが、
自分だったらどう思うのか
を反省して欲しいのです。

先のアルバイト嬢は、ルールを遵守して作業を優先してしまったのです。

その結果、無言でお客様が帰ってしまったのです。


☆「会わずに売る」

このように、若い人の接客センスの低下は顕著になっています。

育った環境の影響が大きいと思うのですが、店の方では、その瞬間に立ち会う
ことがなければ、分らないのです。

「白木屋」などで有名なワタミでは、お客様のクレーム・ハガキを大切にして
問題解決を重視しています。

テレビなどで取り上げられているので、ご存じの方も多いと思います。

「クレームは宝物」という姿勢が大切なのです。

そこから、いろんな「躾け」が生まれるのです。


ところが、街のお店では、こういうシステムがないので、
現場で起こっていることに遭遇するまで気付かないのです。

先のお好み焼き屋さんは、
一見は、キビキビとしたお嬢さんなのですが、思いやりにかける面があるので
「冷たい感じのする人」
ということに気付くまでに時間がかかると思うのです。

メガネの縁は、インテリ風な濃いものでした。

私は、つくづく「会わずに売る」という重要性を思うのです。

「人」がいるから売れないケースが多くなっているのです。

ネット通販が好調なのは、こんな背景も大きいのです。

私は、お客様に「できるだけ、人を雇わずに売る方法を考えましょう」と
提案しています。

体験的に「給料分を稼げない営業や販売員が多くなっている」という感触から
真剣に「無人接客」を進めているのです。

一人の人件費を月に80万円とすると、例えば、一人10件売るような商品
ならば、4万円安く設定して、2倍売る方法を考える方が現実的だと話して
います。

人材育成という面では、オール「無人」という訳には行かないのですが、
できるだけ人を雇わない方向で運営できるように指導しています。

こんなエピソードからも「会わずに売る」の必要性を体感したのです。
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