厚生労働相の諮問機関、社会保障審議会の特別部会は17日、先月末に公表された生活保護制度の見直しを柱とする厚労省の「生活支援戦略」素案について本格的に議論を始めた。保護の申請に訪れた人を自治体が体よく追い返す「水際作戦」を巡り、受給者らの支援団体代表は「厚労省案が助長する」と指摘したのに対し、自治体代表は真っ向から反論した。同部会は年内に最終案をまとめる意向だが、意見の集約は難航しそうだ。
 厚労省案のうち、やり玉に挙がったのは、働く意欲のない人について「3回目の申請から就労意欲を厳格に確認する」案や、扶養を断る親族に説明責任を課す案など。支援団体側は「ケースワーカーの恣意(しい)的判断の余地が大きくなる」と受け止め、水際作戦が広がりかねないとみている。

 保護費抑制を目指す自治体の一部では水際作戦が横行しているとされる。07年には北九州市で52歳の男性が保護を受けられず、日記に「おにぎりが食べたい」と書き残して餓死した。08年のリーマン・ショック以降は厚労省が速やかな保護決定を求める通知を出したものの、支援団体への相談は後を絶たない。今年1月には札幌市で40歳代の姉妹が孤立死しているのが見つかった。市の窓口を3回訪れても保護を受けられず、「水際作戦だ」との批判も出ている。

 17日の部会では、3回目から審査を厳しくする案に対し、NPO法人「ほっとプラス」の代表理事、藤田孝典氏が「何をもって就労の意思がないと判断するか」と疑問を示し、親族の扶養義務を強化する案についても申請をためらう困窮者が増えると強調した。

 これに対し、お膝元で孤立死が見つかった上田文雄・指定都市市長会副会長(札幌市長)は「疑念がわかない運用を明示していく努力をしなければならない」とやや歯切れが悪かったものの、自治体側の厚労省案への評価は高く、岡崎誠也・全国市長会相談役(高知市長)は「恣意的に水際で排除することはしていない」と反論した。

 最後まで意見は対立し、部会長の宮本太郎・北海道大大学院教授は「自治体の真摯(しんし)な取り組みを支援するところにポイントがある」と議論を引き取ろうとした。しかし、藤田氏は「水際作戦は厳然としてある」と引かなかった。【遠藤拓】毎日新聞
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