事案は、「Y会社は、都内大田区池上の本社工場のほか、川崎等に工場を有する従業員約1300人の株式会社であり、電機労連傘下の企業内組合があった。会社は、組合が毎回出す工場食堂使用許可願は拒否していたが、某日組合副執行委員長で川崎工場勤務のAは、社外での電機労連幹事会議に有給休暇をとって出席後、許可なく川崎工場食堂で開催予定の合同集会に出席するため、会社の入構拒否を無視して川崎工場に立ち入った。会社は、Aに対し、川崎工場内従業員食堂における組合集会に参加したことは服務規律違反であるから今後規律を乱すことのないよう警告する旨の文書を交付した。組合が地労委に救済申立。X地労委は、会社の食堂使用拒否を労組法7条3号違反、Aへの警告を同1号・3号違反として救済命令を発した。その取消を求めて会社が行政訴訟を提起したもの」である。

 これは、池上通信機事件であるが、最高裁(最判S63,7,19)は、原審の判断を無修正で支持した。原審の判旨は次のとおりである。

1 本来企業施設は企業がその企業目的を達成するためのものであって、労働組合又は組合員であるからといって、使用者の許諾なしに当然に企業施設を利用する権限を有するものではないし、使用者において労働組合又は組合員が組合活動のため企業施設を使用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことはいうまでもなく、このことは、当該組合がいわゆる企業内組合であって、労働組合又は組合員において企業施設を組合活動のために使用する必要性がいかに大であっても、いささかも変わるところがない。

2 このように解すべきことは、労働組合法が使用者の労働組合に対する経費援助等を不当労働行為として禁止し、ただ最小限の広さの事務所の供与等を例外的に許容しているに過ぎない(同法7条3号)ところの法の趣旨に適合する当然のことである。労働組合又は組合員による企業施設の利用関係は、この点において、企業が労働安全衛生法70条の規定に基づいて労働者の体育活動、レクリェーションその他の活動のために企業施設の使用を認める場合とは、基本的に性格を異にするものといわなければならない。

3 そして、使用者は、企業目的に適合するように従業員の企業施設の利用を職務規律として確立する一方、企業目的の達成に支障を生じさせ秩序を乱す従業員の企業施設使用行為を禁止又は制限しあるいは違反者を就業規則等違反を理由として懲戒処分に付するなどにより、企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができるのはいうまでもないところである。

 この判例は、会社の施設管理権と企業秩序を重視した判断になっています。

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